パチスロ 履歴

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……異世界の旅は如何だったかな?」「え、えっと……た、ただい、ま?」皆さま、ここまでのご愛読ありがとうございます

第9章はここまでとなります

まさかのリリアが戻って来るという展開

果たして鬼塚は? 飛ばされたデューク達はどうなるかなど、次の章でお楽しみ下さい

そろそろクライマックスが近づいてきていますので、何卒ご愛読下されば幸いです

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それでは

静希達が資料を受け取り、その対策をしてから数日、普通の生徒たちも資料を受け取るべく教室内で待機していたいつもなら自分たちも同様に独特の緊張感と共に班長達が帰ってくるのを待つのだが、静希達は幸か不幸か既に内容を知り尽くしてしまっている建前上鏡花も他の班の長と共に職員室に向かっているが、あくまで形式上の物なのでさしたる意味はない、もしかしたら追加情報もあるかもしれないが、それが手に入ったらまたブリーフィングをすればいいだけの話である「なんかあれだな、いつもと違うと違和感あるな」「まぁ違和感はしょうがないだろ、周りとの空気も全部違うんだから」「疎外感っていうのとは違うけど・・・ちょっと居心地悪いね・・・」すでに内容を知っている三人は周りに聞こえないように小声でそんな会話をしている、他の生徒たちも普通に会話したりしているが、その表情や仕草の節々に緊張感にも似た物があるのがうかがえる一年間の総集と言ってもいい今回の校外実習、恐らく全体的に難易度は高く設定してあるだろう、それを他の生徒たちも何とはなしに察しているのだ、仮にも一年間実習と訓練を重ねてきたわけではない思えば、今の静希達は最初に実習に行った時の雪奈や熊田の状態に限りなく近い物になっているのだろう、あの時は二人の集中や振る舞いなどに自分達との明確な差を感じたが、なかなかどうして一年も活動すればそれなりに変わるものである面倒事に巻き込まれ続けた静希達だけではなく、普通に学校生活を送っていた他のクラスメートたちも、何か口では表せないような風格を持ち合わせているように思える経験を積んだことによる自信か、それぞれによってその空気は違うが、最初の実習の頃を思い返すとまるで別人のようである「一年間・・・長いようで案外短かったな」「そうだな・・・まぁいろいろあったし、しょうがないんじゃね?」「本当にいろいろあったしね・・・」いろいろ、というにはあまりにも多くの事柄が静希達の間では巻き起こっていた、少なくとも一年前には想像もできなかったことばかりだ全てがいい変化で、いい事柄だったかと言われれば首を横に振るが、それらすべては余りあるほどの経験となって静希達の中に蓄積されている人間関係も、生活も何もかも変化している、静希達だけではなくそれは他のクラスメートたちも同様だろう喜ぶべきことであるかはさておいて、その変化は少しずつ少しずつ静希達を成長させていく要素となっているのだと実感できた「この分だと来年はどうなることやら・・・特に静希の行く末が不安だぜ」「お前に心配されるほどじゃないと言いたいけど・・・一度やらかしてるしなぁ・・・」「ふふ、もうあんな思いさせちゃだめだよ?」一度静希は本気で陽太達に心配をかけている、死にかけていたためそんな余裕はなかったがそれだけの危険に晒されたのだ静希の近くで明利は笑っているのだが、それは表層上だけで目はまったく笑っていなかったもう静希は明利も雪奈も心配させることはしてはいけないのだ、なにせ雪奈の片腕がかかってしまっているのだからそんなことを話していると、教室の扉が開いて城島と各班の班長が戻ってくる先程まで騒がしかった教室内は一変、静かになり城島の言葉を全員が待っていた「あー・・・今回で今年度最後の実習になる、全員気を引き締め、全力で事に当たるように、ただ怪我などはするな、終わり良ければ総て良し、最後位は華やかに終わって見せろ、以上解散」城島にしては随分としっかりとした激励を送ったものだと静希達は感心しながら資料の束を持ってやってきた鏡花に視線を送るその表情は何か考えているようではあるが、何を考えているのかまではわからないだが考えるだけの内容があの資料の中にあるのだろうと納得し、とりあえず帰りのHRが終わったのを確認して荷物をまとめ始める「どうだった鏡花ちゃん、何か追加の情報とかあった?」辺りが一斉に騒がしくなるのに乗じて明利は鏡花のそばに歩み寄る、それを確認してか鏡花は少しげんなりした表情を明利に見せた「あー・・・まぁ追加って程じゃないけど・・・あとで全員に話すわ、全員知っておいた方がいいでしょうし」その言葉に明利をはじめとして静希も陽太も首をかしげてしまう一体何がこんなに鏡花の気分を沈ませているのか、それだけの情報が資料に込められているのかとりあえず静希達は荷物をまとめいつものようにお菓子やら何やらを買い込んで静希の家へと向かうことにする「まさか二回もブリーフィングすることになるとはなぁ」「まぁ今回は規模が規模だし、仕方ないんじゃない?」鏡花の言う通り、今回の実習は今までのそれとは規模が違う静希はすでに軍が関わるような事件に干渉してきたが、鏡花たちは初めてなのだ単身で軍の中に入ることと、チームで軍に入るのとはまた難易度も状況も全く変わってくる、しかも今回自分たちはいてもいなくてもいい立場なのだどれだけ邪魔にならないように静希のサポートができるかというのが重要になってくる普段は静希が自分たちをサポートする立場であるというのに、今回に限ってはそれが逆転するあたり静希本来の立場というのが浮き彫りになると言うものである「えっと・・・とりあえず概要だけ言っちゃうとね、今回の私たちの滞在期間が決定したのよ」滞在期間、つまりは静希達が今回の実習にかけることができる時間という事である実際は召喚が行われるまでがリミットになるわけだが、事後処理なども含めて今回は行われるのだろうかと飲み物などを用意した静希と明利は全員の前に湯呑などを置いていく「で?実際何日居るんだ?召喚までの猶予とかも知りたいし」「一週間よ」その言葉に全員が飲みかけていた茶を吹きだす普通の実習は金土日の三日間で行われる、まさか三日間を飛び越えるどころか倍近い日数を過ごすことになるとは思ってもみなかった「ちょ、ちょっと待て、確か召喚が行われるのが日曜日だろ?ひょっとして出発って・・・」こうして話している今日は火曜日、金曜日に出発だったらその日まではだいぶ余裕があったのだが、実際の余裕はもっと少ないのかもしれないかなり規格外な実習内容なために他の班と違う日に出発しても何もおかしくないのだ「出発は木曜日よ、他のみんなよりも一日早い出発になるわね」木、金、土、日、月、火、水、これが今回の実習スケジュールになる出発の木曜日は恐らく移動でほとんどが終わるだろう、その資料には移動のスケジュールなどもすべて記されている、と言っても行って帰っての分だけでそのほかは自分たちで決めるようだが召喚の前三日、召喚の後三日というスケジュール、いや移動を考えれば実際は二日ずつの猶予を作ったと考えるのが妥当だろうだがまさか一週間も向こうにいることになるとは思っていなかった「・・・今までで最長の実習だな・・・」「本当にね、帰ってきたら誰かにノートのコピー貰わないと・・・ったく誰かさんが面倒を呼び寄せなきゃこんなことには・・・」「わ、悪かったよ・・・まさかこんなに長いとは・・・」金土日以外の日は他の生徒は普通に授業があるために、自分たちはその授業に出席することはできないという事になるのだが、そうなると随分と授業に遅れが生じてしまうことになる訓練などはまだいいとして座学の方は遅れを取り戻すのは非常につらい、こういう事態であるために仕方がないと言えるが、静希の我儘でこうなっているのだ、多少恨む気持ちもあった資料に記されていたのは事前に城島から受け取った資料とほとんど同じだが、移動など飛行機の時間などのタイムスケジュールと、すでに待機している軍の人員とそれを総括する人物の名前が記されていたそれを見ると確かにげんなりしてしまうのも当然だろう、実習よりもその後の方が面倒そうなのだから「こりゃもう今日から準備始めないとな・・・パスポートとか着替えとか武器とか・・・明日は忙しそうだ・・・」「明日以降はもっと忙しそうだけどね・・・前々から用意しておいてよかった・・・」海外に行くというだけでも準備が必要だというのに、その猶予が実質一日しかないという事態に僅かに焦りを覚える中、静希は鏡花の持っていた資料に目を通し始める「・・・うん、内容自体は先生に渡してもらったのと変わりないな・・・あとは今まで考えたことを詰めるくらいでよさそうだ」先日しっかりと話し合いをしたために大まかにではあるが静希の中でもプランはできていた、後はそれを実行できればいいのだが、そう上手くいかないのが校外実習と言うものである資料を読んでいる静希を横目に、陽太が何か考えだし口を開いた「なぁ、今回の実習って召喚が上手くいくように護衛するんだよな?」「名目上はね、静希の目的はそれにつられてやってくる悪魔の契約者との接触よ」今回静希はその契約者と接触したいが為にテオドールを使って自分の所へ実習という形で任務を請け負った、仮に召喚自体を妨害されたとしても相手と接触し拘束できれば静希の中では成功なのだ「うん、それは納得したんだけどさ、その悪魔の契約者は何で召喚実験の所に来るんだ?」陽太の言葉に、鏡花ははぁ?と眉を顰め、静希は資料を見るのをやめる「そりゃ、あれでしょ、召喚される人外を自分のものにするためとか、そう言うのじゃないの?」「そうなのか?もう契約してるんだからそれでいいんじゃねえの?」鏡花の言葉に陽太は納得していないようだが、陽太の言う通り、悪魔の契約者がなぜ召喚の場にやってくるのかの理由が不明なのだ召喚実験の数日前にフランスに到着するような手はずをとったというだけで、実際はただ通り過ぎるためにフランスによっただけという事も十分あり得るが、静希やテオドールの予想通り召喚実験を目的にやってくるのだとしたら、一体何がしたくて来るのだろうか鏡花の言うように自らの手の内に人外を加えるためだろうか、それなら自分で召喚をすればいいのではないかと思える犯罪者という立場のために長時間一つの場所に留まれず、召喚陣を作るだけの時間的猶予がないから他の召喚を利用するという考えは理解できなくはないだがただ召喚されるものを手に入れたいがためだけにわざわざ危険区域に首を突っ込むようなことをするだろうか悪魔の契約者として警戒されている以上、そこにはかなりの数の戦力が投入されるとみて間違いない、そんな場所に飛び込んでまで新しい人外を求めるだろうか、それも何が召喚されるか全く未知数なものであるというのに研究者となれるほどに優秀なエルフが、不確定要素の強い召喚に対してそこまで強く出る意味が分からない、リスクに対してのリターンが不明瞭な状況に突っ込むほど、状況判断ができないような人物であるとは思えなかった誤字報告が五件たまったので二回分投稿今日から数日間所用で予約投稿をするために反応が遅れてしまいます、どうかご容赦くださいこれからもお楽しみいただければ幸いです

静希は考察する、一体悪魔の契約者カロラインは何を目的にやってくるのだろうか召喚自体を止めるため?可能性はある、犯罪者でありながら他国からの依頼を受け召喚自体の妨害を命じられた可能性も十分考えられる召喚自体は目標ではなく、それを護衛している軍への干渉が目的?これも可能性としては十分あり得る、召喚という一大的な実験を前に、それを目的としていると見せかけて軍部への攻撃を目的としているとしたら他国から軍部への攻撃を命じられ、相手の軍事力を減退させることが目的となればこれもあり得ることだった召喚実験の関係者に接触するため?可能性としてはある、召喚自体は目的ではなく、召喚に関わる研究者こそ最大の目的である可能性は否めない、召喚自体に間に合うよりも研究者を攫うことが目的だとしたら召喚が可能な研究者の利用価値はかなり高い、それこそ他国にわたるようなことがあればかなり面倒なことになるだろう考えれば考えるほどに厄介な事案だと思いながら、今回自分たちがやることがどんどん明確化していく仮にどんな目的があったとしても、悪魔の契約者を拘束してしまえばそこまでだ静希にかかるプレッシャーと負担がその分増えることになるが、そのことは承知で今回のことに首を突っ込んだのだ、もう覚悟はできている「そのことに関しては一応予想をいくつか立てておくとして・・・まぁ向こうの情勢とかもチェックしておいた方がいいのかもな、召喚実験に参加してない他国の介入である可能性も捨てきれないし」「あー・・・なるほどね、そう言う考えもあるのか・・・」今まで国際的な問題に巻き込まれたことがなかった鏡花からすれば静希の考えは目から鱗だったのだろう、口元に手を当ててさらに思考を進めている様だったが、ここでそのことを予測していてもしょうがないのだ相手の目的を予想することで、行動から次に相手が何をしたいのかを予測する熟練した将棋や囲碁などの棋士は一手を見ただけで相手が何をしたいのかを予測することができるというが、静希や鏡花がやろうとしているのはまさにそれである実際それができるかどうかはさておいて、予想するというのは非常に大事なことだもし相手が意味不明な行動や、こちらの想定外の動きをした時、事前に予想した目的の中からその動きにどのような意味が込められていて、相手が何をしようとしているのかをわずかながらにだが予測することができるそうすれば相手にとって都合の悪い行動をとることで、その目的を阻むことだってできるのだ動物などには通じない、思考する人間を相手にするからこそ必要なことである今まで奇形種などの動物などを多く相手にしてきた鏡花と違い、静希は良くも悪くも人間相手の行動がやや多めである経験の違いと言えばそこまでだが、そこは静希と鏡花の思考の方向性の違いだろう鏡花は物事を理論的に考えることに終始し、あくまで理屈で物事を進める対して静希は、物事を理屈で進めることは鏡花と同じだが、その理屈の中には狂気にも近い物が含まれる、その為普通の人間なら思いつかないような策や考えを思いつくのだ「ねぇ静希、仮にその契約者が召喚自体が目的じゃない場合、私達はどう動くべきなの?」「・・・ぶっちゃけ召喚自体は邪魔されてもいいから相手の目的を邪魔しながら捕縛したいな」静希にとって今回の召喚実験は何ら興味のない事項であり、はっきり言えば後回しにして何の問題もない物であるこれで召喚が邪魔され静希の評価が落ちたとすれば、それはそれで有難い、下馬評が高くていいというのは本当に実力があるものだけだ、静希のように大して実力もない人間にとっては高すぎる下馬評など邪魔でしかないそう言う意味ではわざと召喚を潰させるのもありだと思ったこともあるだからと言ってさすがに露骨に手を抜くのもあまり良いことだとは言えないだけに複雑だった「これは統一しておきたいんだけど、召喚の成功とか向こうの研究者の身の安全とかよりもカロラインの確保を最優先にしてほしいんだ、話したいことが山ほどあるし」その話したいことというのは勿論彼女の背後関係についてだもしこれで彼女が口を割らないというのであれば静希の強引な質問で答えさせることもあるかもしれない「相手は悪魔だってのに、無茶言うわね」「まぁ無茶ではあるかもだけど、無理ではないだろうからな、なるようになるさ」静希のいうように勝ち目が全くないというわけではないこちらにも悪魔の契約者はいる、それにこちらには悪魔などの人外に対して友好的手段と言える静希がいるのだもしカロラインが悪魔の心臓に細工をして、悪魔を意のままに操っていたとしたら静希の能力でそれを解除することもできる、そこはメフィのお墨付きだ、実際試したことがないのが少し不安ではあるが、そこはメフィを信じるしかない相手はエルフ、多勢に無勢で物量で押しつぶすことができればいいのだが、それができないことがあるのが能力戦だ相性と言うものが重視される能力者同士の戦いにおいて絶対はない、だからこそ戦略が必要であり、連携が必要なのだなるようになると言ったものの、実際どうなるかは静希も分からない実際起こってみてのお楽しみ、というには少々物騒な内容であるのはここにいる全員が把握していたそれぞれの実習の準備と、一日の猶予を終え、今年度最後の実習の日普通の生徒たちは今日は授業があるというのに静希達だけ早朝に大荷物をもって校門前にやってきていた静希と明利が一緒に到着すると、そこには珍しくすでに城島が立っているいつもなら全員が集まったところで静希達を見つけてくるのだが、今日はどういう風の吹き回しだろうか「おはようございます先生、今回もよろしくお願いします」「あぁ・・・清水と響はまだか」「多分もうすぐ来るかと・・・あ、来た!鏡花ちゃん!陽太君!」明利が視線を向ける先には並んで校門へ向かってくる陽太と鏡花の姿を見つけることができる、二人とも静希と明利に負けず劣らず大荷物だ「あー・・・ひょっとして僅差だった?早めに出たつもりだったんだけど・・・」「二人ともおはよっす、先生もおはざっす」二人の二人らしい反応に静希と明利は苦笑し城島はため息をつくと、紙を一枚取り出して読み上げ始める「えー・・・これから一年B組一班の校外実習を始める、最後の実習だからくれぐれも気を抜かずに全力で事に当たること・・・それから・・・えー・・・もういいか」恐らく校長か教頭あたりに渡された校外実習を始める際のありがたい長時間スピーチだろう、城島が途中で面倒くさくなって懐にしまったその紙にはびっしりと文字が記してあったのを静希は目ざとく見つけていた城島が面倒くさがってくれて本当によかったと思える、これから長期の実習に行こうというのに出鼻をくじかれてはたまらないと言うものである「ではこれから移動を開始する、各員忘れ物はないな?パスポートは全員持っているな?」城島の言葉に全員が手元にパスポートを用意し提示する、これがなければ日本から出ることもできないのだから無くすわけにも忘れるわけにもいかないとりあえず今のところは順調に事が進んでいるようで何よりである「一番の心配だった響が大丈夫なら問題なさそうだな、それでは空港に移動するぞ」「なんかひどい扱いな気がするぞ鏡花姐さん、こんな時俺はどうすればいいんだ」「とりあえず笑っときなさい、とびっきり微妙そうな顔で」鏡花の突き放す一言に陽太はいわれた通り微妙な笑みを浮かべていた、いわれた通りに微妙そうな顔を作ることができるというのもなかなか技量がいるような気がする「ところで先生、大野さんたちは空港で合流ですか?」「一応その手はずだ、今のところ予定変更の連絡などはない、予定通りの飛行機でフランスに向かうぞ」フランスに向かうぞなどと言うことを簡単に言ってはいるが、一体何時間かかるかわかったものではないイギリスのほぼ隣にある国であるためにイギリスと移動距離と時間はほぼ変わらないだろうことを考えると半日近く移動に費やすことになる少しげんなりしてしまうが、飛行機に乗るのは実に久しぶりだ静希以外の人間は日本での行動が主だったために飛行機に乗るのは海外交流会以来という事になる、その為三人とも少しテンションが高い「そういやせんせー、フランスの土産って何がいいっすかね」移動を開始して数十分、あと一時間も経たない内に空港に到着するであろう頃に陽太が自分の財布を見つめながらそんなことを聞いてきた「なんだ藪から棒に」「いやせっかくフランスに行けるんだし、なんか買っておきたいなと思いまして」陽太の気持ちはわからないでもない、実際静希達はブリーフィングの際に土産物に関して調べていた静希もイギリスには行ったことがあってもフランスはないのだ、興味がないと言えば嘘になる「フランスか・・・私も一度しか足を運んだことがないな・・・」「へぇ、その時は何を買ったんですか?」まさか城島がフランスに行ったことがあるとは思わなかったために静希達は全員少し驚いた表情をする城島は案外フットワークが軽い、そう思える一面だった「その時は・・・何を買ったんだったか・・・食べ物だったのは覚えている」「・・・ひょっとして結構前の話ですか?」「あぁ、私が高校生の頃の話だ」城島が高校生の頃の話、丁度城島の父親が再婚して間もないころだろうか、城島が一番荒れていた時期でもあるというそんな時期にフランスに行くなどと一体何をしに行ったのだろうかと不思議になるが、とりあえずはスルーしておくことにした「あぁ思い出した、確か高級チーズの詰め合わせだとかを買った気がする、なかなか美味かったな」「チーズっすか・・・高級とか言われてもなんかパッとしないっすね」食と言うものに強い関心のない陽太からすれば、食えて美味いか否かが食事において重要な点である、仮にそれが高級な素材を使われていようと、スーパーで売られている安物だろうとうまければ問題はないという思考をしているのだだからこそ高級品などの違いが分かるとも思えない、仕方がないと言えばそこまでだが鏡花とのこれからが不安になる一面だった「まぁ、高級というだけあってスーパーなどで売っているそれとは違ったのを覚えている、どこが違うかまでは覚えていないがな」その言葉に静希達は苦笑する、恐らく城島も陽太と限りなく似た部類であることがわかる一言だ、素材にあまり興味のない部類の人間であることが露見し、少し城島のことがわかったような気がした土曜日なので二回分投稿引き続き予約投稿中です、反応が遅れますのでご容赦くださいこれからもお楽しみいただければ幸いです

静希達が空港に到着すると、そこには私服姿の大野と小岩が静希達の到着を待っていた、その近くには恐らく今回同行してくれるであろう、もう二人の姿も確認できた「やぁ五十嵐君!待ってたよ」「大野さん小岩さん、今回も面倒に巻き込んで申し訳ないです」「あはは、イギリスに引き続き今度はフランス、この調子なら数年後には世界全部の国を網羅できそうね」冗談交じりに小岩は笑うが、静希からすれば冗談ではない、一年以内に二つの国に行くなんてあまりないどころかほとんどないであろうことだ、もしかしたら本当に数年後にはこの世界のすべての国を行き来するようになっているかもしれないから笑えない最初の挨拶を終わらせ、静希は大野と小岩の後ろにいる二人に目を向けるその視線を察したのか、大野は二人を紹介するべく静希達の前に二人を立たせた「みんなに紹介するよ、今回同行する平井隆文と荒川薫だ」「ど、どうも、よろしく」「お、お願いします」平井と荒川と紹介された二人はやや緊張した面持ちでこちらに頭を下げてくる、平井はガタイの良い男性、頭髪を五分刈りにしているのが特徴的でいかにも体育会系といった様相だ一方荒川は細身の女性、短めの髪と長い手足が特徴的だった、身長は百七十に届くかもしれないほどの高身長なのが見て取れる一体どんな話を聞いた結果この反応になったのかは後々しっかり聞いておく必要があるかもしれない「えっと、じゃあこっちも自己紹介を」「はいはい・・・初めまして、喜吉学園一年B組一班班長の清水鏡花です、右から同じ班の幹原明利、響陽太、五十嵐静希です」班を代表して鏡花が挨拶し、それぞれの紹介と同時に一言ずつ挨拶して頭を下げていくすでに面識のある大野と小岩はその光景をほほえましく見ていたが、平井と荒川の視線が静希と明利に注がれる片方はこれが本当に高校生なのかという疑いの目、そしてもう一つは、彼が噂のという若干の畏怖を含んだ視線だった「挨拶も済んだところですぐに手続きをするぞ、後の話はまたあとにしろ」「あ・・・先輩、そんなに急がなくても」「あぁ?」小岩は団欒の会話を取り持とうとしたのだが、城島に一睨みされるとすいませんという言葉と共にすぐに引き下がってしまうこの二人に関しては完全に上下関係ができてしまっている様だった、何とも見ていて面白い限りである全員が手続きを終え、飛行機の準備ができるまで待っている間、大野と小岩はともかく、新顔の平井と荒川は少々居心地悪そうにしていたまぁ当然かもしれない、高校一年生の校外実習で海外に行くこと自体が異例だというのに、しかも休みを利用してフランスに一緒に行くことになってしまったのだそしてその原因が目の前の普通そうな少年にあるという事で少々警戒の色が強いように思える当然の反応だと静希は割り切っているが、このままだと少し居心地が悪い、これから世話になることもあるだろうから柵は可能な限り取り除きたいのだが、どうしたものか「そういや小岩さんって城島先生の後輩なんすよね、なんか先生の面白エピソードとかないんすか?」「うぇ・・・?その・・・えっと・・・ここではちょっと」相変わらず空気を読まない陽太が、城島が目の前にいるのにもかかわらずそんなことを言うものだから小岩が蛇に睨まれた蛙のように縮こまってしまっているあんな状態で昔話などできようはずもない、しかも『話したらどうなるかわかっているだろうな?』とでもいうかのような鋭い眼光が城島から放たれている小岩が哀れでしょうがないので、とりあえず静希は助け舟を出すことにした「おら陽太、飛行機の時間は長いんだ、そういう暇な時間に長話はしてもらえばいいだろ、せっかくまだ店があるんだから適当に話の肴でも買いに行こうぜ」「お!いいな!全員で食えるようなチップ系にするか!」陽太の興味を城島に関する昔話から食べ物に変えたことで一時的に事なきを得たが、結局話すことに変わりはないのではないかと小岩ははっとなるそして静希の親指が微妙に立っているのを確認してやられたと項垂れてしまう「えっと、その・・・うちのバカがすいません・・・」「・・・ううん、平気よ、こうなったら覚悟を決めるわ」それは一体何の覚悟だろうか鏡花は聞きたかったが近くにいる城島から放たれるプレッシャーがその質問を許してくれなかった生徒や後輩に向けるべき眼光ではない、明らかに敵に向けるそれである「そ、そう言えば大野さんたちと平井さんたちってどういう関係なんですか?同僚・・・ですか?」「あぁ、こいつらとは軍に入った時からの同期でな、まぁそれなりに長い付き合いだ」「あはは、こいつといるとたかられるからいやなんだけどな」大野と平井はどうやらそれなりに仲がいいのか軽口を言い合っている、それに対し小岩と荒川はそんな二人を見てため息を吐き合っている、どうやら少し頭の弱い二人を支える頭脳役としてこの二人がいるようだった似た者同士というかなんというか、妙に行動や言動が似ている気がしてならなかった静希達が飛行機を待つこと数十分、準備ができたという事で早速搭乗すると流石に久しぶりの飛行機で生徒全員に緊張の色が走った「なぁ静希、だいたいどれくらいでフランスにつくんだ?」「えっと・・・確か大体十三時間くらいだった気がする・・・ほぼ半日だな」静希の言葉に陽太はうへぇと嫌そうな顔をする以前イギリスに行った時も同じくらいの所要時間だったが、また同じほどの時間がかかるとなるとどうしても嫌気がさしてしまう、なにせ前回陽太たちが行ったときは二、三時間ですでに飛行機に飽きていたのだから自分たちに宛がわれた席を探していると、少し歩いてその場所を見つけることができるどうやら全員の場所が近くになっているらしく、それぞれ話しやすい位置になっていた「なぁ静希、どうせテオドールの奴に支払い任せるならファーストクラス?とか高い席とっても良かったんじゃねえの?」「あ・・・そうだな、どうせならこういうところでもむしり取ってやればよかった・・・次からそうしよう」「あんたら鬼か・・・ファーストクラスでこの人数移動させたら凄いお金かかるわよ・・・」今まで海外への依頼を受けた時の移動は主に転移能力者を用いてのものが多かったために飛行機に金をかけるという考えが浮かばなかったのか、静希はしまったなぁと後悔している様だった日本からフランスに行くだけでも十万以上するというのに、それでファーストクラスの席をとろうとしたらその五倍近い値段がついてもおかしくない今回移動するのは生徒四人、教員二人、軍人四人、全部で十人だ、これだけで五百万くらいかかる計算になる、ただの移動でここまで金をかけるというのはさすがに可哀想になる日本からパリへの直行便はさらに金がかかるためその金額も跳ね上がるだろう「でもさ、案外すいてるし席自体は空いてるんじゃねえの?それなら少し安くならねえの?」「空いてるイコール安くなるってわけじゃないのよ、サービスとかも違うらしいし」鏡花自身ファーストクラスのサービスを受けたことはないために、調べた限りの知識でしかないが、それこそ座る席から何から違うらしいそして陽太の言う通り、この飛行機に乗っている客は少ないように見える平日の日本からパリへの直行便、出張に行くサラリーマン風の男性が数十名いる程度、見たところ随分と空席が目立つもしかしたら静希達のいる区画が少ないだけかもしれないが、こんなものだろうかと首をかしげてしまう「それにしても空いてるね、ほとんど大人の人たちばっかりだし」「普通の学生はこの時間は学校に行ってるからな、俺らがおかしいだけだろ、普通の実習のスケジュールも無視してるしな」大きな荷物はすでに空港に預けているために静希達が持っているのは手荷物だけだ、それらの中から暇つぶしになるようなものを探し出しながら静希は再度周囲を見渡す日本からパリへの直行便というだけでそもそも利用する客層も少ない上に今日は平日、しかもまだ午前中だ、出張で行く人間以外でこんな便を利用する人間はいないという事だろうか「人は少ないが、あまり騒ぐなよ、周りの人の迷惑になる」城島の注意に静希達は小声で了解ですと答えると、近くにいた小岩が小さく笑う「・・・今なぜ笑ったのか・・・一応聞いておこうか?」「ご、ごめんなさい先輩・・・でも普通に先生っぽくて・・・」ぽいもなにも城島はれっきとした教師だが、どうやら小岩の中では城島のイメージを教師と言うものと結びつけるのが難しいらしかった昔の城島がいったいどんな性格をしているのかを知っているのは恐らく城島と同じ班だった三人、町崎、村端、国岳、そしてその頃に関わりを持っていた数人くらいなのだろうその数人のうちの一人が小岩という事である「小岩さん、城島先生って昔はどんな人だったんですか?」何気ない質問だったのだが、その質問が飛んできた瞬間に城島から放たれるプレッシャーが強くなる威嚇というにはあまりにも荒々しく、その圧力は小岩の方へ向かっている様だった城島は口に出すことなくこういっているのだ、しゃべったらどうなるかわかっているだろうなと小岩は冷や汗を流しながらどうしたものかと悩みだしてしまうせっかく静希と同じ班の子たちと一緒になり、しかも先輩である城島の指導を受けている生徒たちだ、昔の話にちょっと花を咲かせるくらいのことはしてあげたいのだが、すぐ横から放たれるプレッシャーにはあらがえない席の配列として前列窓際に明利、その隣に静希、陽太、鏡花の順で並び、その一つ後ろの席に窓際から平井、荒川、大野、小岩、城島の順で並んでいる静希達の列の席は一つ空いており、その席が監査の教員用のものであることがわかるのだがそこに姿はない、すでに仕事中である以上姿を見せる訳にはいかないのだろう、一体どこにいるのかわかるはずもないそこで小岩は一つ思いつく「先輩ちょっと前失礼します」小岩が城島の前を横切り、前の静希達の席へとやってくる、こうすれば小声で話せば城島に聞かれることなく話すことができるだろうと考えたのである「さぁ少年少女たち、先輩のことでよければいくらでも話してあげるわよ」「ほほう・・・いい度胸だ・・・」小岩が小声で話しても城島には聞こえているのか、腕を組んで怒気を発散させている城島の声が僅かに響く中、そのことに気付いていない小岩は嬉々として静希達に城島の昔の話をし始めた日曜日なので二回分投稿予約投稿中にて反応が遅れます、ご容赦くださいこれからもお楽しみいただければ幸いです

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小岩が城島の昔話に夢中になっている間に、飛行機は出発時間となり、独特の加速と共に飛行機は空高く舞い上がることになるこれから約十三時間ほど飛行機の中にいることになる、そうなってくると時間はいくらでもあるのだがその分暇になることも多かった「そう言えば大野さんたちには今回の目的とか話してませんでしたっけ?」「あー・・・一応概要は知ってるけどね、詳しくは知らないな、今回は護衛に回るつもりなんだっけ?」飛行機が安定した後、静希が身を乗り出して後ろにいる大野の方を向くと、そのすぐ近くにいる城島が殺気を振りまいていることに気付けるが、今はスルーしておくことにする恐らく後で小岩が酷い目に遭わされるのだろうが、そこはもう仕方ないだろうだが大野の言っていた護衛に回るというのは間違いではないのだが、今回自分たちがやろうとしている本当の目的に関しては今教えるべきだろうかと悩んでしまう「まぁ他にももう一つ目的があるんですけど・・・まぁそれはホテルについてから話します、初日は顔合わせとかばっかりだと思うんで、時間も取れると思いますし」「・・・もしかしてまた厄介ごとに巻き込まれる感じかい?」ひきつった顔をしている大野に対してご名答ですと満面の笑みで答えると、彼は額に手を当てて項垂れる大野と小岩は以前静希と一緒に二度ほどイギリスへ向かったことがある一度目は悪魔の契約者であるエドとの戦闘の時、二度目はイギリスのお姫様に会いに行かされた時だ、後者は比較的のんびりしたものだったが、前者に関しては危険が満載だったのは言うまでもない今回はどちらかと言えば前者に近いため、この二人には本当に申し訳ないと思うばかりである「なぁ大野、五十嵐君っていったい何者なんだ?詳しい話は聞いてないんだが・・・実習で海外に行くなんてなかなかないだろう」恐らくあまり説明をされずに静希達への同行を命じられたのだろうか、明らかにげんなりしている大野の表情を見てこれがただの実習ではないことを察したのか平井が不安そうな表情をしているのがわかる「あー・・・俺の方から説明するのはちょっとな・・・たぶんホテルについたらしっかり説明してくれると思うぞ」「それまでは何も説明なし・・・っていうのはちょっと不安になるんだけど・・・」平井に同調して荒川も不安そうな表情を前からこちらを覗いている静希に向ける、確かにほとんど説明をしていないのでは不安になるのもしょうがないと言うものだろう軽く説明して状況を理解してもらうのも必要なことかもしれないと、城島にわずかに視線を向けると、その視線に気づいたのか城島は小さくうなずいて見せる「えっとですね・・・俺らが今まで関わってきた事件の黒幕につながる手がかりが今回の実習で掴めるかもしれないんです、なので知り合いに頼んで実習に組み込んでもらったんです」あくまで概要としての話、これで納得できるかはさておいて公共の場で話すことのできる限界まで話したつもりだっただが平井も荒川もあまり納得していないようだった、当然だ、細かいことは何も話していないんだから「・・・え?それだけ?」「もうちょっと詳しい説明してくれないと・・・こっちとしても困るんだけど・・・」話したいのは山々なのだが、こんな誰が聞いているかもわからない場所で機密性の高い話をするのはさすがに憚られる、どうしたものかと考えていると静希は一つ疑問に思う彼らはどこまで説明を受けているのか「ちなみに皆さんは町崎さんの部下・・・なんですよね?」「あぁ、大野たちと同じだ」「なら、町崎さんからどういう風に今回のことを説明されましたか?」今彼らがどのような認識で静希達についてきているか、静希の知っている内容と彼らの知っている内容に差異がないように説明するためには相手が知っている情報を把握しておくのも必要なことだ「えっと・・・校外実習で学生が海外に行くからそれに同行し協力しろとしか」「後は事が終わったら好きに観光してくれて構わないくらいしか・・・」それに付け加えて旅費を出してくれるから喜んで参加したという事を告げると、静希は一瞬大野の方を見る、彼は気の毒そうに笑い、お手上げのポーズをとった旅行気分で来たのだろうか、学生の実習だからそこまで難易度は高くないと予想しているのだろうか、それなら静希が実習を持ってきたような言い方に疑問を持っているのも納得である以前静希と行動したことのある大野と小岩には最低限の概要は話してある様だったが、今回初めて行動する平井と荒川にはほとんど何も話していないのと同じなようだったこれはつまり、静希が信頼に値すると判断した場合は話してくれればいいという町崎なりの配慮だ静希はただでさえ面倒事を抱え込んでいる、味方を増やすにしろ巻き込むにしろ、人を選ぶことは必要だと思ったのだろうこちらとしてはありがたい限りなのだが、どうしたものかと静希は頭を抱えてしまうなにせ大野と小岩の時は半ば無理矢理に巻き込んでしまったのだ、それから面倒が起こるたびに二人には世話になっている、二人のように無理やり巻き込むのはさすがにまずいだろうなと考え、静希は少し時間を置くことにした決定権もなく話を聞くよりはいささか人道的だろうと思ったのが一つの理由でもあるが、今話すことができないというのもある意味丁度良かったのかもしれない「えっと、今すぐに話すことは難しいです、なので各所への顔見せが終わってからホテルに到着したらお二人には、話を聞くかどうかを決めてもらいます、ただ一つ気を付けてほしいのは、一度聞いたらもう戻ることはできないってことです」静希がほんの少し殺気を混ぜて話したことで、そのわずかな違いに気が付いたのか平井と荒川は表情を強張らせていた静希が事情を話すという事はつまり、自分の手の内を少なからず明かすという事でもある町崎の人選を疑うわけではないが、少し考える時間と、静希が二人を観察する時間が必要なのも事実だなにせ今回の人選の場合、丁度数日間仕事を休めるというだけの理由だ、信頼に足るかどうかはまた別の話である「ちなみに、もし話を聞かないって選択した場合は?」「その場合はお二人にはなるべく俺には近寄らないような配置をお願いします、今回の実習でも極力関わりが少なくなるように努めますのでご安心を」町崎の人選を信用していないかと言われれば微妙なところではあるが、望んでもいないのに巻き込むのはさすがに気が引けただがその隣にいた大野が苦笑しだす「おいおい、俺たちの時はそんな選択肢は与えてくれなかったじゃないか、ずるいぞ、贔屓か?」「いやいや、大野さんたちの場合町崎さんや先生からいろいろ聞いてたって言ってたじゃないですか、だからまぁいいかなと」悪かったと思ってますよと付け足すが、大野は本当かなぁと不貞腐れたふりをしている大野と小岩が静希と行動を共にした時はすでに事前情報として静希が悪魔の契約者であることを知らされていた、だがこの平井と荒川はどうやら違うようだ、最低限の情報しか与えられていないが故に、心構えも何もできていない状態だ最初から前提条件が違う相手を同じ扱いをするわけにはいかない「えっと、大野と小岩は知ってるのか?」「えぇ、お二人はもう知ってます、その分酷く迷惑をかけていますけど・・・」まだ二回程度だが、恐らくこれからもっと迷惑をかける回数は増えていくだろうことが予想されるなにしろ静希が求める情報のほとんどが海外にあるのだ、海外にいる時に静希単体で向かわせることができる程軍部も委員会も甘くないだろうその気になればエドやテオドールの協力を取り付けて単身海外にも行けるだろうが、その後で何をさせられるかわかったものではない大野や小岩たちは体裁上は静希の護衛と引率が仕事だが、その実監視という役割も与えられているのだ「ちなみにさ、その話を聞く上でこっちに何かメリットとかデメリットはある?」荒川の言葉に静希は押し黙り、大野は少し考えるような表情を浮かべるメリットやデメリットがあるかと聞かれても、静希からしたらデメリットしかないように思えてならない、なにせ強制的に面倒事に巻き込まれるようなものなのだ「えっと・・・俺が思う限りデメリットしかないかと・・・大野さんはどうです?俺と関わることで得られるものってあります?」「えっと・・・そうだな・・・一応手当はつく、あとは・・・なかなか得難い経験ができる・・・それと海外旅行がほぼタダってことかな・・・」大野の言葉に静希は苦笑するしかなかった、手当はいいとして、得難い経験などと濁した言葉が皮肉に思えてならなかったのだ世界に数人しか確認されていない悪魔の契約者の戦闘に関わるという意味では確かに得難い経験だろうが、それはむしろデメリットに含まれるのではないかと思われる「その得難い経験ってのは?」「そこは話せませんね・・・ただ危険ではあります」純粋な危険のレベルを挙げるのであれば、日本で味わうようなことはまずないレベルの危険度になる、悪魔の介入というのはそれだけ危ないのだ以前の戦いはメフィや邪薙、フィアの尽力により人的被害は極力抑えられたが今回どうなるかは全くの未知数である「それだけ聞くとあまりいいことなさそうだな・・・」「そうね、デメリットの方が大きい気が・・・」「そう言うなよ、俺らと一緒に巻き込まれようぜ」大野は気安く二人を巻き込もうとしている様だったが、静希としては巻き込まないほうがいいような気がしてきた事情を知らないものをわざわざ巻き込むことはないのではと思い始めているのだ「ちなみに今まで関わってきて一番よかったと思うことは?」「そうだな・・・生まれて初めて高級ホテルのスイートに泊まれたってことかな」「・・・へぇ・・・」一番よかったことがホテルのスイートに泊まれたことという事な時点で二人の気持ちも聞かない方向に流れているのだろう、なにせ悪魔の戦闘を見れただとか、イギリスの王族に会っただとかそんなことを言うわけにはいかないのだ、そう考えればこの回答は自然なのだが、メリットとしては少ししょぼい気がする「まぁ、考える時間はまだたくさんありますから、しっかり考えてもらえればと思います・・・後悔だけはないように」「・・・そうするよ、いろいろと考えてみる」「そうね・・・いい返答ができるようにするわ」二人としてはどっちの方に気持ちが揺れているのかは不明だが、後悔がないことが第一だ、後になって聞かなきゃよかったとか言われても静希からしたらどうしようもないのだ、記憶消去などできるはずもないのだから月曜日なので二回分投稿一応予約投稿は今日までとします、反応が遅れて申し訳ありませんこれからもお楽しみいただければ幸いです

飛行機が日本を離れて数時間、丁度機内食が振る舞われるということで、席を移動していた小岩が元の席に戻ると、静希達の後方から小岩の小さな悲鳴が聞こえてくる恐らく城島の制裁を受けているのだろう、彼女の冥福を祈るしかない「あれだよな、機内食ってなんかこう強烈だよな」「強烈って言い方はどうなのよ・・・まぁ言いたいことはわかるけどさ」静希達に振る舞われた機内食は肉か魚か、和食か洋食か選ぶことができ、それぞれ思い思いのものを頼んでいたのだが、そこは機内食、普通に作られる料理よりもずっと濃く独特の味がするインスタントというほどの安っぽさはないのだが、即席物よりも強い香りと味がするのが特徴だ、機内で傷ませないための工夫がされているのだろうが、この食事は何度食べてもきっと慣れることはないだろう「あと十時間・・・一体何してればいいんだよ・・・」「イメトレでもしてなさいよ、危険は多いんだから、後は暇つぶしのゲームとか?」飛行機の時間が長いことは把握していたために暇つぶし用のゲームは勿論持ってきているものの、それだって限界がある二、三時間はゲームで時間は潰せても後の数時間は何をすればいいのか寝ておくというのも一つの手ではある、なにせフランスに到着するのは日本時間の夜二十二時頃だが、現地時間では十五時ごろになるのだ昼から夕方に変わろうという時間帯に到着するわけだが、そこからさらに行動することを考えると寝ておくことは必要である鏡花が陽太にイメージトレーニングを勧めたのもそれが理由である、陽太は目を瞑って集中すると大抵寝る、今のうちに寝て英気を養っておくのも必要なことだとはいっても、今日行う予定は関係各所への顔見せのみ、そこまで激しい動きはしないと思うのだが、実際は何が起こるかわからないのだ「静希は何やってんだ?さっきからなんか見てるけど」「ん?俺は現場の周辺を覚えてるんだよ、どうせやることもないしな」静希が食事をしながら見ているのは今回召喚が行われる研究所の周辺地図だ以前ブリーフィングをした時、鏡花といろいろ話し合いいろいろと書き記してあるものである頭脳労働を必要としない陽太と違って、静希は覚えておくことだったり頭に入れておきたい情報がいろいろあるのだ、そしてそれは鏡花も同じである「なんならお前も覚えるか?そのほうが楽に動けるぞ」「えー・・・地図かぁ・・・地図かぁ・・・」静希から地図を借りて数秒眺めた後で飽きたとすぐさま地図を返却してしまうあまり乗り気ではなかったようだが、わざわざ地図を覚えるという事をする必要性がないと思ったのか、陽太は機内食の肉に食らいついていた「まぁ実際忙しくなるのは向こうについて・・・明日からだろうな、特に明利の索敵網は敷いておきたいし」実際今日はやることはほとんどない、そして明日からはまず時差の調整と現場周辺に明利の索敵網を敷くのが主な仕事になるだろう、一日かけて索敵網を完成させたら軍の人間ともある程度打ち合わせなどをしておきたいところである我ながら面倒なことに首を突っ込んだものだと静希がため息をつくと、後ろの方から声が聞こえてくる「そういえば五十嵐君、俺らはどう動けばいいのかな?一応ただの旅行者としていくわけだし・・・一緒に行くのはまずいよね?」そう言えば今回はそう言う立場だったなと静希は思い出す、前回、前々回のように四六時中行動を共にしてもらうわけにはいかないと考えて静希はとりあえず暫定的にだが指示を出すことにした「あー・・・そうですね、今日はホテルでゆっくりするなり街を移動するなり好きにしてください、明日は主に明利の索敵網作成の手伝いを、当日は現場付近の警戒に当たってもらいます」「了解、じゃあ現場の場所を確認したら先にホテルの方に戻らせてもらうよ、いろいろ見て回れるだろうしね」せっかく無理を言ってついてきてもらったのだ、彼らもちゃんと旅行らしく楽しんでもらわねば非常に申し訳ない後ろではどこを回ろうかとか何を買おうかなどの議論がされる中、静希は資料を読みふけっていた今回のメインはあくまで静希だ、サポートとして、そして体裁上は一緒にやってきてくれた陽太たちや大野たちにも協力はしてもらうだろうが、それはあくまで補助に近い主な戦力が自分しかいない以上、自分が何とかするしかないのだ全てを抱え込むつもりはないが、それだけシビアな状態になるのはまず間違いないだろう前回のエドとの戦闘でそれはすでに学習済みだ実際に悪魔同士の戦闘が始まった場合、普通の能力者ではそれについていくことも難しくなる、その為行動しながら次の手を考えて他の人間を動かした方が楽なのだもちろん人間一人でできることも考えられることもたかが知れているために、もしもの時は鏡花にオブザーバーとなって観察、そして意見を出してもらうつもりである強力な能力に加えて頭脳も持ち合わせている彼女なら遺憾なくその力を発揮できるだろうもっとも、危険な状態で最高のスペックを発揮できるかは鏡花の気力にかかっているわけだが、もしもの時は陽太にしっかりと守ってもらうことにしようお姫様ならぬ女王様を守るナイトというわけだ、ナイトにしては姿が少々禍々しいが、その点は鏡花の脳内補完で何とかしてもらうしかない一体どれくらいの時間が経過しただろうか、資料を読み終え地図も頭の中に入れてしまった静希は大きく伸びをしていた陽太をはじめとする何人かは眠りについている、鏡花が未だに資料に目を通しているがそれもそろそろ終盤に差し掛かりそうだったずっと座った状態でいたために肩が凝ってしまい、首をわずかに動かすとボキボキと何かが鳴る音がする、今度オルビアにマッサージを頼まなければと思っていると、城島が後ろの席から静希の頭を軽くつついてきた「ん?・・・なんですか先生」「少し話がある、付いて来い」城島はそう言って席を立ち、区画を分ける部分の通路に静希を連れてきたそこにあった売店のようなところで飲み物を注文して静希に渡すと、自分も飲み物を買って近くの壁に寄り掛かる「とりあえず、今のところの方針はさっきあいつらに言ったとおりだと思うが・・・今回、私はどう動けばいい?」「うぇ?・・・せ、先生も動いてくれるんですか・・・?」まさか城島からそんな申し出があるとは思わなかったために静希は少し驚いてしまった城島は引率という立場だ、彼女が実際に動くといろいろと面倒な部分があるのは確かなのだが「問題ない、事前に話はつけておいた・・・内容が内容だけに、委員会の方も黙認するそうだ」「あぁ・・・そうですか・・・」本来城島は傍観し監督することが仕事だが、今回に限っては実際に戦闘を行ってもお咎めはないという事だろう、相手が悪魔の契約者である以上、そこまで不自然ではないが、静希が考えている以上に事は大きくなっているのかもしれなかった「でも、正直俺が指示するより先生の方がずっとうまく立ち回れるんじゃないかと思うんですけど・・・」「そうでもない、確かに私はお前より経験は豊富だが、悪魔の、ひいては悪魔の契約者との戦闘は今回が初めてだ、そう言う意味ではお前の方が経験豊富という事になる」静希は今まで二度悪魔との戦闘を経験している一度目は自分が契約しているメフィ、二度目はエドが契約しているヴァラファール一度目は静希だけではなく陽太と鏡花、そして監査の教員も合同で立ち向かったが、軽くあしらわれるかのように返り討ちにされた、結果的に無事だったのは偏に運が良かったとしか言いようがない二度目はメフィや邪薙、フィアの協力によりほぼ互角に近い戦いをすることができたが実際静希は指示を出したり動き回ったりフォローをしただけだ、悪魔同士の戦いにおいて役に立ったわけではないとはいえ、確かに悪魔との戦闘経験のない城島が動くというのはさすがに不安がある、日本に前原という婚約者がいる以上、彼女にはあまり無理はさせたくないものだ「・・・一応、注意点とかやってほしいこととかは頭にありますけど・・・可能な限り城島先生は待機していてほしいですね」「・・・ふむ、ひょっとしてだが気を遣っているつもりか?」そんなところですと言いながら静希は城島からもらった飲み物に口をつける僅かに苦いカフェオレ、先程まで頭を使っていたためにその中にわずかに含まれる糖分が体に染みていくような感覚がした、疲れた時には甘い物とはよく言ったものである「じっとしているというのは、案外暇でつまらないものなのだがな・・・」「まぁそうかもですけど、ぶっちゃけ先生の能力は市街地戦で結構使えるものだと思ってるんです、部隊の移動も楽にできるし、相手も拘束できたり攻撃できる割に周りを巻き込まないし、なので一つの場所で役割を与えるより有事の際の遊撃隊みたいな感じになってもらえればと思ってます」城島の能力は重力の発生と操作だ、何もない場所に重力場を発生させることもできるし、重力の方向を変えることもできる、それらを応用して飛行や高速移動なども容易に可能とする、周りへの被害が限りなく少ない能力であるため、市街地戦においては大いに活躍できる能力である静希のいう通り、一つの場所に留まって役目を果たすよりは、指示を与え続けてあちこち飛び回って行動してもらう方が貢献度は高くなると考えたのだ城島としてもその考えに異論はないらしく、とりあえずの所は納得している様だった「あいつらに関してはどうするつもりだ?」「あいつらって・・・鏡花たちのことですか?」城島がそうだと答えた後、静希は僅かに眉をひそめる実際の所、そこが最も迷うところでもあったからだ明利はさておいて陽太と鏡花の戦闘能力は決して低くない、陽太に至っては手加減状態ではあるがメフィの攻撃を真正面から受け止めて見せたのだ、悪魔と戦えるだけの地力は持っていると思っていいだろうだが、だからと言って最前線に一緒に立たせるかというのは別問題だ明利の配置はもう決まっている、城島と共に基本待機で現場から静希達に指示を送るのがメインでの仕事になるだろうだが陽太と鏡花の扱いに少々困っていたあの二人は基本何処でも最低限以上の実力を発揮できるだろう、だからこそ困るのだ汎用性が高い分、どこに配置していいものか本当に困る遊撃隊に入れてもいいし前衛部隊のアシスタントに入れても申し分ない、工作部隊や市街地などの安全確保へまわってもいい選択肢が多すぎるとかえって迷ってしまうという事なのだが、静希個人の友人でもあるために危険なところに配置したくないという事以外何も決まっていないのが現状なのだ「明利は城島先生と同じく待機、陽太と鏡花に関しては・・・まだ決まってません」「ふむ・・・あいつらの能力的には前線に出ても問題ないとは思うが・・・私と違いすでに相対したことがあるしな」陽太と鏡花の二人はすでに悪魔との戦闘を経験済みだ、と言っても手加減状態のメフィとの話だが、その空気はすでに十分すぎるほど味わっている、前に出てもしっかりと動いてくれるだろうが、静希の気は進まなかった「やはり身内を危険に晒すのはお前でも躊躇うか」「・・・時と場合によってはやりますけど、やる必要もないのに危険に晒すのはどうかと・・・」静希は別に絶対に陽太達を危険に晒したくないと言っているわけではない、必要に迫られれば、可能な限り安全な策を考えたうえで実行させることもあるだが相手の勢力も能力も何もわかっていない状態で前に出させるのはさすがに危険すぎるのだそれに今回静希の側にいるのは何も自分たちだけではない、フランスに駐在しているであろう軍隊もいる、何も自分たちだけががんばる必要などないのだ相手の能力が解析でき次第戦力を投入していく予定だが、それまでは移動と挑発と遠距離からの攻撃を駆使して相手の能力を探っていきたいところである陽太達の力を借りるのは恐らく後半戦、これからが正念場という場面だろうと考えていた「俺が主に矢面に立って相手の動向とかを探って、目的やら能力やらが判明したら動いてもらうことになると思います、そのほうが安全だし対策も立てやすいし」「・・・まぁ間違ってはいないな、お前の連れのことを考えればいい判断だと思うぞ」城島も静希の考えに反対はしなかったが、少しだけ言いかたが引っ掛かる、何かもう少し足りないという事を示唆されているような感覚だった事実、静希も今の考えに物足りなさを感じている、より正確に言うならば堅実に行き過ぎている気がするのだ自分だけで行動するのであればもっとアグレッシブに行くことができるのだろうが、身内が近くにいるとこうまで行動が制限されるとは知らなかった危険に巻き込めない、巻き込みたくないそう思うだけで考えが縮こまるという事だろうか、妙に考えが凝り固まってしまっている気がした「五十嵐、一つだけアドバイスをしておこう、私が実際に体験したことだ」「・・・なんですか?」「お前は、お前たちはチームだ、チームは一蓮托生、死なばもろともだ、一人だけが負担すればいいなんてことはない、たとえそれが危険なことでも全員で立ち向かうことに意味があるし、そのほうが有利に働く、理屈とか抜きにな」全員で立ち向かうことに意味があり、理屈抜きに、そのほうが有利に働くその言葉に静希は眉をひそめてしまう理屈抜きに良い方向に働くなどという事があるだろうか城島が実際に体験したことだというのなら、きっとそれはかつての彼女の班のことを指しているのだろうか、それとも彼女がかつて所属していた部隊の話だろうか理屈ではないその言葉に静希は疑いを隠せないなにせ静希達は班を分断して行動することが多い、それもまた協力の一つであることは理解しているし、そのほうが手っ取り早く効率がいいからだ今回の場合も、消耗を抑えて後半に力を残しておく方が有効だと静希は考えていただが城島はそれではだめだと暗に告げている、一緒に行動するべきだと言っている「あいつらを危険に晒すのは・・・俺はあまり気が進みません」「危険に晒せとは言っていない、お前自身わざわざ危険に晒される必要もない、使える手駒はいくらでもいるんだ、そう言う奴らを使ってお前自身も温存すればいいだけの話だ、違うか?」城島の言葉に静希は絶句する簡単にまとめると、他の軍人たちを使って相手の手の内を探り、美味しいところだけお前達でかっさらえと言っているようなものだ「さすがにそれは・・・ちょっと角が立つんじゃ・・・」周りの人間に苦労だけさせて自分たちでおいしいところを横取りするなどあまり印象は良くないように思える別段抵抗があるわけではないが、敵視されそうで怖い「バカ者、むしろ逆だ、お前は確かに特殊な立場にいるが建前上はただの学生だ、そんな奴が前に出ているのに他の軍人がのらりくらりとしてみろ、そのほうが角が立つ、あそこの軍は日本の学生にも劣るのか、とな」「・・・はぁ・・・そういうもんですか・・・?」城島の言う通り、静希の考えの場合最前線に静希が立ってその攻撃や動向を事細かに確認するという事になり、軍などはその包囲などに回ってもらうか静希のサポートに回ってもらうつもりだった確かに第三者から見ると学生にいいようにつかわれているか、学生を盾代わりにしているように見えなくもない「しかも実際は今回の相手に軍がまともに戦えるかどうかも怪しいんだ、それなら最初に特攻してもらって情報を引き出させた方が幾何か有意義な使い道だろう」「ひどいこと言ってますけど・・・まぁ確かにそれはそうかもですね」悪魔というのはとても耐久力が高い、それこそ普通の能力者ではダメージなど与えられないだろう、だからこそ同じ悪魔を使役できる契約者をぶつけるのが最良手なのだ静希の考えだと最初から最後まで軍は静希におんぶにだっこ状態だが、城島の考えならしっかりと前半で仕事ができることになる、ものの言い方を変えるだけでここまで心象が変わるというのは少々驚きだが、この際目を瞑ることにした「そのあたりはしっかりと清水達と話し合って決めろ、最終的な決定権がお前にあるとしてもだ」「・・・了解です」今後の方針を考える上で自分の考えを鏡花たちに伝えるのは確かに必要な事だろういつものように理由を伏せてもいいのだが、今回ばかりは危険度からしてきちんと話して納得してもらったほうがいいと思ったのだ報告連絡相談はチームに置いて必要不可欠なことでもある、まだ事情をほとんど知らない平井と荒川がいるため、席に戻ってすぐに話をするというわけにはいかないだろうが夜に時間を作ったほうがいいかもしれない「あの・・・先生は今回の件、どのようにとらえていますか?」「どのように・・・とはまた抽象的だな、今回の何を、と聞いてくれると答えやすいが」確かにどのようにだけでは範囲が広すぎたかと、静希は現在考えておきたい事柄を一つに絞って聞くことにする特に確認したいのは、悪魔の契約者でもあるカロラインの動向についてだ「今回の相手が、何故現場に向かってくるのか、その意図を測りかねています・・・なので意見をいただけたらと・・・」静希の言葉に城島はふむと腕を組んで思考し始める城島は静希よりも大人だ、様々な事件に関与していた経験から今回のことに関して静希達が思いつく以外の見解を持っているかもしれない思考の幅を広げるという意味で意見を求めて損はないと思ったのだ「私はお前から聞いたのと資料に載っていた程度の事しか知らないから大したことは言えないかもしれないが・・・そうだな・・・資料にあったもう一人の身内のためかもな」「身内・・・あぁ・・・例の・・・」静希も城島も周りに内容のことを悟られないようにずっと言葉を濁して会話していたが、ここでようやく静希と城島の間にわずかな言葉の差が生まれたその為城島が言った身内という言葉が、カロラインの弟のことを示していると気づくのに少し時間がかかってしまった家族を殺しておきながら弟だけは助けた、あるいは弟と合同で犯行を行ったか、まだそのあたりは不明だが、カロラインはまず間違いなく弟と一緒に行動しているとみて間違いないそう考えると、今回召喚に向かうという事が弟のため、と言われると妙に信憑性がある「・・・つまり身内に新しいおもちゃを与えようとしている・・・そういう事ですか」「あくまで私の予想でしかないがな・・・すでに一つおもちゃを持っていると考えればできないことはないだろう」おもちゃ悪魔をおもちゃなどと表現するあたり静希の皮肉が見て取れるが、城島の言う通りカロラインがすでに悪魔と契約していた場合、もう一体の悪魔、あるいは人外が召喚されたとして契約することは十分に可能だと思われる召喚された相手を拘束するもよし、交渉するもよし、身近に悪魔がいれば無理な話ではない「仮にそうなった場合、当日もそうですけど前日から周辺を警戒しておかないとまずいかもしれませんね」「そうだな、あらかじめ潜入されていたのでは話にならん、事前調査と索敵は十分にしておくべきだろうな・・・とはいえ・・・相手が相手だ、潜入などまどろっこしいことをせずとも正面突破も可能かもしれんがな」「そのために俺が行くんですよ、少なくとも足止めだけはしてみせます」戦力として純粋に静希を見ると、その戦闘能力は能力者の中ではずば抜けている無論静希単体ではなく、静希に付き従う人外たちも含めての場合である静希単体では並の能力者程度、あるいはそれ以下の戦闘能力しかないが、人外たちを含めた場合、エルフさえも軽く凌駕するだけの実力がある各種攻撃に秀でた悪魔メフィストフェレス発現系統の再現という能力を持ち、多種多様な攻撃を放つ、その一つ一つの威力はかなりのもので、城島もそれを間近で目撃している専守防衛に長けた神格邪薙原山尊小神という力の弱い神格でありながらメフィと同格の悪魔の攻撃を数発ではあるものの防ぐことができるだけの強度を持つ障壁を展開できる、静希が多少無茶しても無事でいられるのも邪薙の働きが大きいそれに加えて静希の剣であるオルビアに、静希の使い魔であるフィア、彼女たちの能力も侮れないオルビアはすべてに触れることができるという効果を静希の能力から得ており、安定した使用率を誇る、そしてフィアはその能力から機動力に秀でており、移動と高速戦闘にも対応できるもし静希が人外たちをすべて展開した場合、例え軍が大隊規模を展開しても止められないだろうただの能力者でありながら、静希はすでに一個人としての戦闘能力をはるかに凌駕してしまっているのだそれなのにもかかわらず本人は目立つことを嫌い、隠密行動などを得意としているのだからおかしな話だ、いや、おかしな話というより恐ろしい話というべきだろう気付いたら自陣の中心に戦略級の存在が潜んでいたなどと、笑い話にもならないしかも静希の交友関係の中にはもう一人悪魔の契約者がいる、これだけ見ればかなり恐ろしい事態だ本人が危険や争いを望まないとはいえ、いつか必ず喧騒には巻き込まれる、その時静希がどのように対応するのか、城島はそこまで考えて小さくため息をつく誤字報告が十五件分溜まっていますので四回分投稿結構長い間予約投稿期間を作っていましたが、この程度で済んだのは僥倖でしたこれからもお楽しみいただければ幸いです

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城島との密談を終え席に戻ってくるとその場にいた全員が眠りについていた日本時間にしてまだ十六時ほどだが、昼寝という名目で今のうちに寝だめしておくのも必要なことであるこれからさらに動くことを考えると静希もそろそろ仮眠をとったほうがいい気がしてきた静希は資料などをすべてまとめたうえでしまい、とりあえず仮眠をとることにしたあまり疲れていないが、目を閉じるだけでも意味があるだろうと目を閉じてゆっくりと息をするするとトランプの中に意識が向いてしまい、雑談していた人外たちの会話が聞こえてきた『だからね、片手を使うなら回避プラスと広域は必須だと思うのよ』『ですがそれではボマーがつけられません、ここは広域は外すべきでは』『だが爆弾を連発されるとこちらとしてもつらい、回復が重要なのはお前も理解しているだろう』一体何の話をしているのか静希はなんとなく察するが、恐らく十数時間トランプの中にいるためにやることがないのだろう、人外たちはゲームの話に花を咲かせていた正月に三人に共通のゲームを渡してから時折こういった話し合いの場が作られることは多々あった静希が意識を向けていない時でも人外達はそれぞれご近所付き合いとでもいえばいいのか、それなりに仲良くやっている様だった安心するところだろうか、それとも呆れるところだろうか、三人そろって現代に染まってきているという事実に嘆息するしかなかった『お前ら緊張感ないのな・・・』『あらシズキ、暇な時間にこうやって作戦を考えておくのよ、大事な事でしょ?』その作戦がゲームの事でなければ最高なんだけどなと呆れながらも静希は思考を緩やかに停滞させていく先程まで回転させていた頭を休めることで眠りの方向へと移行しようとしているのだ『これから御就寝ですか?でしたら静かにしていますが・・・』『いや、そのままでいいぞ、どうせ眠れないからな、音楽代わりに丁度いいかもな』時間が時間のせいで眠気など皆無なために、目を瞑り眠りに限りなく近い形で疲れを残さないようにしているだけだ、ただ放心しているよりは人外たちの会話を聞いているのもいいかもしれない普段静希が耳を傾けていない時間人外たちがどんな話をしているのかも気になるところでもある『それじゃあ勝手に話してるわよ?・・・で、さっきの話に戻すけどさ、私と邪薙の武器から言って回復にどうしても時間がかかっちゃうのよ、それに比べてオルビアのは片手でしょ?アイテムの使う手間少ないじゃない?』『それは理解できます、ですが私の所有しているアイテムにも限りがあります、広域を用いても回復できるのは・・・調合分を合わせてもせいぜい十回あるかないか・・・それなら短期決戦を挑んだ方が効率が良いのでは?』『確かにオルビアのいう事ももっともだが、それは上手くいった場合の話だろう?毎回上手く爆弾が効くとも限らん、安定した戦いができる回復役を担ってくれるとこちらとしては助かるのだが』どうやら人外たちはこれからかなりの大敵にぶつかるにもかかわらず何のプレッシャーなども感じていないようだった、むしろこれから作る装備についての議論の方が重要なようで、少し安心してしまうこの三人が自分にはついているのだ、心配などする必要がないことに気付き静希は自分の体を椅子に深く預ける『ですがそうすると私の今の装備では広域と回避性能、それにプラスで一つ付けるのがせいぜい・・・もう少し良いお守りに恵まれれば他の道もあるでしょうが・・・』『なんだったらまたお守りマラソンやる?なんかあんたってお守りの引き悪いわよね』『我々はなかなか悪くないものを手に入れられたのだがな・・・アイテムと一緒に装備も受け渡しができれば楽だったのだが・・・』とはいえまさかこんなに廃人チックな話をしているとは思わなかったために静希は苦笑してしまうまさか正月から始めてすでにお守りの厳選作業まで行っているとは思わなかっただけにその驚きは大きい元々現代の順応が早かったオルビアや娯楽に関して妥協しないメフィならまだわかるのだが、まさか邪薙がここまで現代の娯楽に対して真摯に打ち込むとは思ってもみなかったお前は神様としてそれでいいのかと言いたくなるが、一個人の趣味にとやかくいう事もないだろうと聞き流すことにした『お守りの厳選はいいのですが、それだと武器の発掘もした方が良いのでは?特に邪薙の武器は妥協した結果のものでしょう』『あー・・・確かに性能微妙よね、切れ味が白だったら最高なんだけど・・・確かそれ青ゲージまででしょ』『あぁ、攻撃力と属性値は文句なしなのだが、それだけが欠点だな・・・だがこれ以上のものを出そうと思うとまた長いこと厳選が必要になるぞ』その会話に静希はさすがにゲームを勧めたのは失敗だったなと確信する最新作でようやく導入された発掘装備にまで手を出しているという事実に静希は驚愕を通り越して呆れてしまうこの一、二か月でいったいどれだけやりこんでいるのかと言いたくなる、静希だってお守りと発掘装備の厳選をしたのは手に入れてから半年近く経過してからだったというのにこれが日夜暇している人外たちの本気という事なのだろうか、そのうち静希達全員より上手くなっている人外たちがいそうで怖い、きっとその未来は案外近い日になるかもしれないなと思いながら、人外たちの会話を聞きながら意識をゆっくりと沈めつづけた静希が目を休めてどれだけ時間が経っただろうか、ようやくパリに到着するという事で全員降りる準備を始めていた幸いにしてパリの天候はなかなか良いようで着陸時もほとんど衝撃なく済んだ「あー・・・やっとか・・・ふぁぁぁあ・・・」「欠伸をするときは口を押さえなさいっての・・・気持ちはわからなくないけどね」「長かったね・・・体が凝っちゃったよ」「軽く運動したいところだけど、さっさと降りようぜ、迎えも来てるかもだし」アナウンスが聞こえた後で静希達は早々に下りる準備をし、それぞれ手荷物をまとめてから移動を始めた空港でも国の違いはやはり出るもので、以前イギリスに行った時のような独特の空気の違いを感じることができた入国手続きと荷物を受け取った静希達はとりあえず資料にあった案内人を探すことにした「えっと・・・確かまずはホテルに送ってくれるんだっけ?」「あぁ、そのあとチェックインと荷物を置いたらすぐに現場に行ってくれるらしい・・・そこまでしか書いてないからそこからは自由行動だろうな」資料に書いてあったスケジュールはそこまで、あとは自由に移動なりはしていいという事なのだろうが、さすがに土地勘のない場所で行き来するのは危険であるためにある程度案内人がついてくれるらしいまぁ体の良い監視役だろうが、それでも便利なことに変わりはない「五十嵐君、俺たちはどうしたらいいかな?今回の件に関しては部外者になるわけだけど・・・」「あー・・・そう言えばそうですね・・・どうしたもんか・・・ホテルに先に行ってもらってもいいですけど・・・その場合はタクシーとかになりますかね・・・ホテルの住所とか知ってますよね?」「えぇ、メモしてあるわ、それじゃ私たちは先に行ってましょうか」住所さえ分かっていればタクシー運転手に場所を伝えれば問題なく向かってくれるだろう言葉の壁に関しては多分何とかするだろう、彼らもいい大人だ、英語くらいは話せると思いたい、もっともフランスの言葉は文字通りフランス語だが「で、俺らは使いを待つと・・・」「んー・・・どっかにいると思うんだけどなぁ・・・」大野たちが出発したのを見送ってから事前資料にあった案内人の写真を見ながら空港内を見渡すが、それらしい人物は見当たらなかった一体どこにいるのだろうかと見渡しているとエントランスの方から軍服らしきものを着込んだ男性が三名ほどこちらにやってくるのが見えたあれだろうなと思いそちらの方に全員の視線が集まると、やはりというかなんというか静希達の前で一度停止し一度敬礼をして見せる「我々は国防省国家憲兵隊の者だ、日本から派遣された能力者で間違いないか?」「間違いありません、喜吉学園より参りました、一年B組一班とその引率の城島です」すでにオルビアの簡易翻訳は始まっているためにフランス語だろうと何の問題もなく翻訳される、彼らはそれが能力の作用だとわかっているのか、言語の壁が取り払われているという事にわずかながらに安堵している様だった「言葉が通じるのであれば話が早い、これより君たちを宿泊先のホテルへと移送し、その後今回の現場に向かうことになるが、問題はあるか?」「いいえ、どうぞよろしくお願いします」城島の握手をそのまま受け入れ、そのまま全員を引き連れて空港前に停車してあった大きめのワゴン車に全員を乗せる全員が乗ったことを確認するとゆっくりと発車し目的地のホテルへと移動を始めた「ところで、君たちの中に『ジョーカー』がいるという事を聞いているのだが、相違ないだろうか」ジョーカー、その言葉の意味を理解しているのだろう、城島は一瞬眉をひそめたが、すぐにその視線を静希の方へ向ける「彼がそうです、ジョーカー、五十嵐静希」「ほう・・・彼が・・・」静希の方を見た軍人らしい男性が僅かに目を細める、その視線にどのような意味が込められているのかわからないが、少なくとも完全に歓迎しているというわけでもないようだったそこは大人の柵とでもいえばいいのか、それともプライドか、こんな学生に力を借りるようなことになっていること自体に不満を持っているのかもしれない「・・・純粋な疑問なのだが、彼は本当に・・・契約者なのか?」「・・・それは本人に確認していただければと」城島はあえて明言せず、静希に話を振ることで直接会話をする機会を与えた、今後行動を決めるのは主に静希だ、フランスの人間が自分に対してどのような印象を持っているのかを把握する材料は多い方がいい「聞いてもいいかなミスターイガラシ、君は本当に悪魔を連れているのか?」「さぁ?少なくとも悪魔の相手は慣れていると言っておきますよ」静希の言葉にその場にいた全員の表情が強張る静希が一体どういう意味を込めて言ったのか、そして彼らの表情にどういう意味が込められているのか、まだ互いに探りを入れている段階だだが少なくとも、この場にいるフランス人は静希にわずかながらな警戒を向けていた子供にしては大人の相手が慣れている、そして何よりその眼と表情に普通の学生ではないと言うものを感じ取ったのだろうその後特に会話らしい会話はなく、静希達は今日宿泊するホテルへと到着したホテルは周りの建物に比べるとだいぶ高く、そして新しく高級さがうかがえるものだったテオドールがまた頑張ってくれたのだろうと思っていると、フランス人が二、三フロントと話した後で鍵を持ってきてくれる「これが鍵だ、それぞれの部屋で荷物を置いたら戻ってきてくれ、現場へ案内する」「ありがとうございます、行くぞお前ら」城島の後に続く中、静希はわずかにその場に残っているフランス人に視線を向け含み笑いを浮かべる明らかに三人の表情が強張っているのがわかったからだおそらく訓練を積み、実際に起こる犯罪や能力者などとの対処や戦闘経験は豊富なようだが悪魔との接触自体は初めてらしいいつ悪魔が出てくるのかビクビクしているという印象だ「目に見えて緊張している様だったな・・・あれでは付け入ってくれと言っているようなものだ」「ですね、どうします?またトップに揺さぶりかけて主導権握りましょうか?」静希と城島がそんな危うい会話をしているのを鏡花たちは複雑そうな表情で聞き流している、なにせ静希は一度イギリスの軍の部隊長に対して同じことをやっているのだ場所が違えどやることは同じ、前回は静希の立場を明確にしていなかったが、今回はすでに悪魔の契約者という事が知らされている、そう考えれば多少無茶をしても問題はないように思える「いや、今回はあえて軍にしっかり動いてもらおう、お手並み拝見と行こうじゃないか、どれだけ動けるかをしっかり見てからお前の動く基準にするといい」「了解です、今日明日はとりあえず様子見でこそこそ動いておきますよ、ただ自由に動けるようにだけさせてもらいます」元より表だって動くことを得意としていない静希としてはひっそり行動できるような状況を作っておくことも必要だ、そう言う意味ではすでに実習は、いや実戦は開始されていると言っていい戦闘は何も戦うだけがすべてではない、それに至るまでの過程が重要なのだ男女それぞれの部屋はすぐ隣にありすぐに行き来ができるようになっている様だった、スイートではないものの、それなりにランクの高い部屋らしく二人部屋にしては随分と広いのがわかる「静希、お前一体何するつもりだ?」「ん?何のことだよ」「さっきから顔がにやついてるぞ」部屋について荷物を置き、移動用の手荷物をまとめている時に陽太が静希の顔を指さしながらそう言うと、静希はようやく自分が笑っていることに気が付いたいつも策を思いついたときの邪笑ではなく、薄く笑うような冷めた笑いとでもいえばいいのか、いつもあまり見ない顔だったので陽太の嫌な予感は加速している様だった「安心しろよ、そこまで派手なことはしないから、ただ舐められるのも癪だし、ちょっとだけ牽制する程度にしておくよ・・・俺らが自由に動ける程度には」陽太は今まで日本以外の軍とかかわった経験はない、そして今まで関わってきた大人の大多数が自分たちに好意的だったからわからないのだ、依頼をしてくれる人がすべて自分たちに好意的ではないという事を特に軍ともなればそれぞれの威信やプライドもある、勝手に動かれると立場がないというのも静希だって理解している、だからと言って行動を制限されては面倒になることこの上ないだから少しだけ牽制する必要があるのだ立場をわからせると言えば少しわかりやすいだろうか、ただでさえ若年かつ学生であるが故に舐められるかもしれないのだ、少し強めにお話しても問題ないだろう少なくとも自分たちは軍隊程度では御することはできないという事を理解されればいい、後は流れでどうにでもなる今回は依頼を受けた立場だから強制的に指揮下に入ってもらうなどという事を言われる可能性だってある、軍の指揮下に入るなど面倒なだけだ、悪魔の力を実際に見てもいない人間に指揮されるなど冗談ではない戦力は必要な時に必要な場所に投入してこそ意味がある、その戦力の大きさを理解していない人間に最適な配置ができるはずもないのだ「ちなみにそれって俺らはなんかやることはある?」「いんや、基本黙っていてくれればいいよ、ただ何があっても動じないように演技してくれれば・・・あと仮面持ってくから準備しておけよ」静希の言葉に陽太は了解と間延びした声を出している、恐らく静希が何をしようとしているのかは理解していないだろうが、自分がやることがないという事は理解したのだろう、荷物の中から鏡花印の仮面を取り出してさっさと荷物を片付けていたとりあえず仮面だけは持ってくるように隣の部屋にいる鏡花と明利にも伝えるべくメールすることにしたメールを打ち終えた後そう言えば大野たちはすでにチェックインしているのだろうかと心配になりついでにメールでこれから現場に行くことを知らせることにしたあの四人にも一応現場を見ておいてもらいたいために偶然を装って移動してもらう必要がある大野達であれば問題なく動けるだろうが、もし既に交通規制などが張られていた場合などはどうしようもなくなってしまう、それこそ静希の先導の下潜入する必要もあるかもしれない堂々と静希の連れであると言ってもいいのだがいちいち説明するのが面倒だ、戦力を温存、そして隠しておきたいという意味でも軍に話すのは少々遠慮したいところであるそんなことを考えながら静希と陽太は準備を終えて早々に部屋を出ることにした廊下にはすでに城島が待機しており、隣の部屋から鏡花たちが出てくるのを待つばかりとなった女子は準備が長いのに城島の準備はいやに早い、いやいいことなのだがどうにも違和感がある「もういいのか?持ち物はそれだけか」「えぇ、後は向こうにつく前に着けておけば大丈夫ですね、まぁもう三人に顔は見られてますけど、正装とか言っておけば誤魔化せるでしょ」静希の持っている仮面を見て城島はわずかに鼻を鳴らすが、その仮面の意味をしっかり理解していた鏡花の作った仮面はサングラスに近い特性を持っており、ある程度光を遮光する作りになっている、つまり相手からこちらの顔色をうかがうことができないのだ後は第一印象を変えるという意味合いもある、ただの学生ではないという印象を与えることができれば成功と言っていいだろう話の流れによっては仮面を外すこともあるだろうし、何より仮面をつけて行動するという事をあらかじめ伝えておくという事も必要である、これで誤って敵と一緒に誤射されてはたまったものではない「お待たせ、ごめんちょっと手間取ったわ」「お待たせ・・・もう行くの?」部屋から鏡花と明利が出てきたことで静希達はようやく準備が整ったと全員が移動を開始する「とりあえずエントランスで待ってる三人の所に行こう、行動は早い方がいいからな」そう言ってせかす静希も、ただ理由もなく急いでいるわけではない急ぐ理由として、活動時間に限りがあるのだそれは単に実習時間という意味ではなく静希達の体の問題である、飛行機の中で仮眠をとったとはいえ日本時間に直せば今はもうすでに深夜零時を超えているため、僅かながらに眠気が襲い掛かっているのだできるなら早めに今日やっておくべきことは切り上げて体調をこの国のそれに合わせなければ今後に響いてしまうのだ事実明利はわずかに瞼をこすっている、静希もわずかに眠気があるためさっさと面倒なことは終わらせておきたいのだ「で、対応は先生に、交渉は静希に任せていいのね?」「あぁ、陽太にも言ったけどとりあえず何をされても動じないようにしてくれればそれでいいよ、後はこっちで何とかするから、行きすぎたらフォローくらいはしてくれればいいよ」エントランスへ向かうエレベーターの中で静希は軽く全員に指示をして頭を回転させ始める眠いなどと弱音はいっていられない、ここは自分がしっかり舵をとらなくてはこういう状況に慣れているのが自分だけしかいないというのもあるのだが、そもそも交渉事ができる人間はこの中では静希と鏡花くらいしかいないのだ陽太は論外として明利は自己主張が少ないためにこういう場での交渉には不向き、となれば静希か鏡花が場を作るしかないのだがそして鏡花には静希がやりすぎてしまったときのストッパーになってもらいたい、俗に言ういい警官と悪い警官の見本というわけだ静希が強くものを言い、鏡花が諭しながら状況を整理する、そうすることで同じ班の中でも強気の常識外れな人間と真っ当な常識人な人間がいるという事がアピールできるつまり静希以外は普通の能力者であるという印象をつけるのだ、こうすることで無茶をするのは静希の、安定した動きをするのが他の班員という印象を付けることもできる鏡花たちを安全な場所に置くためにこのやり取りは必要になるだろう「フォローって言ったって、例えばどうするのよ」「そうだな・・・軍の全指揮権を譲渡しろとか、こちらの指示にはすべて従えとか言い出したら口出して止めてくれればいいよ、そのほうが流れを作りやすいから」「・・・あんたが無茶苦茶言いそうだってことだけはわかったわ・・・」これから静希がしようとしている交渉のことを想像したのか鏡花は額に手を当てて呆れ半分、苦悩半分の複雑な表情をしながらため息をつく静希がやりたいことは理解できた、だからと言って自分がそれを止められるかと言われると微妙なところであるからでもあるもちろん静希だって無茶を言って自分に止めてほしいと思っていることはわかっている、これが本気で言っていた場合、鏡花はどうやって静希を止めたらいいのか全く分からない「先生、いいんですか?こいつこんなこと言ってますけど」「問題ない、少なくとも行動を制限されるのは避けたいところだからな、多少強引でもこちらと向こうの立場を明確化しておくのも必要なことだ」舐められるくらいなら屈服させた方が話が早いしなと城島は悪いことを考えているような笑みを浮かべている、本当にこの人は教師なのだろうかと久々に思いながら鏡花はため息をつくせっかく助け舟を求めたのに、今自分の周りには過激派しかいないという現実に頭が痛くなりそうだった常識人というのはたいてい損をする、どこかの誰かが言ったことだが仕方がないと言えるだろう、彼らを止めないと本当に軍の指揮権をもぎ取りそうだからだ「きょ、鏡花ちゃん、頑張って」「鏡花姐さんファイトっす、静希に意見できるとかマジリスペクトっす」「あんたらは気楽でいいわよね・・・ったくもう・・・」発言や行動すら許されていない二人は鏡花に応援しかできない、鏡花としても頼られて悪い気はしないのだが、さすがに荷が重すぎると嫌気がさすと言うものである静希に軽く指示を受けながら城島を含めた五人は早々に案内の三人と合流しワゴンに乗り込むホテルから出発してフランスの街を走り抜け、郊外にあるという研究所を目指すことになったヨーロッパ圏であるとはいえ、若干ではあるがイギリスとはまた作りが異なり、それなりに味のある街並みを楽しむことができた「まず現場に行って・・・研究者たちとの顔合わせですか?」「えぇ、主任と、その場に隊長も来ているので一緒に顔見せを・・・あとは今後についての話し合いをしてもらう予定だ」研究を行っている人間と、それを警護する人間のトップと同時に会うことになるという事でだいぶ手間が省けると言うものだとはいえ同時に話をするというのは少々面倒でもある、別々の所に行くより手間は省けるだろうが、その分話が面倒になるのは目に見えていたそして研究所に到着する前に静希達は全員仮面を装着する「・・・失礼だが・・・それは?」「学生がつけるヘッドセットのようなものですよ、特に犯罪者や国の関係者などと会う時は装着するんです・・・まぁ初対面の時は顔は見せますが」「実習中・・・あるいは作戦行動が始まった際はこれを付けていることが多いので、他の人間にも見せるという意味で着用を指示しました、まぁ気にしないでください」静希の言葉の後に城島が助け舟を出す、生徒だけではなく教師からも指示を受けたという事であればさすがに無理に取れとは言えないだろう、本人たちが顔は見せると言っているのだ、わざわざ関係を悪化させるようなことをする必要はない研究所の門を車でくぐり、そのまま中に入り駐車場で停車すると中から一名、軍服を着た若い男性がこちらに駆け寄ってくる、どうやら既に研究所の中には軍が配備されている様だった、召喚実験を行おうとしているのだから半ば当然かもしれない「お疲れ様です!これから自分が案内させていただきます!」敬礼しながら静希達を送ってきた三人にそう述べた後で二、三会話して意思疎通に問題ないことを知ると、静希達の前に立って再び敬礼する「これより主任と隊長の元に案内させていただきます、どうぞこちらへ!」若いというだけあって元気だ、どこか陽太に近い物を感じる、恐らく新兵だろうか、妙にきびきびしておりやる気に満ちているように見える案内されて研究所内を見て回ると、その中が随分と広く大きいという事がわかる大病院のそれに近いだろうか、各部屋には様々な計器や薬品などが配置されているらしくいろいろなものが静希達の視界に入ってきたそして数分歩いた後、静希達は巨大な扉の前に案内された、どうやら中はホールのようになっているらしく、かなり広い部屋であることがうかがえる「こちらにいらっしゃいます、どうぞ中へ!」元気の良い男性の言葉に静希達は顔を見合わせた後で扉を開いて中に入っていくすると予想通りというべきか、中はかなり広い空間となっており、その中心部に大量の計器が配置され、その奥には召喚陣らしき模様があるのが見て取れる『メフィ、あの召喚陣、何を召喚するものかわかるか?』『ん・・・ちょっと遠いわ、もうちょっと近づいてくれればわかるかも』さすがに扉の入り口付近で聞いたのは焦りすぎたかと、静希は臆すことなく中へと歩みを進めるすると先程まで自分たちを案内してくれた男性が静希達を追い越し、召喚陣付近にいた男性二人に敬礼して報告を始める「報告します!日本からの協力員五名をお連れしました!」「・・・了解、御苦労、下がれ」「了解しました!」男性に指示した中年の軍人が恐らく今回防衛に当たる部隊の隊長だろう、その軍服にはいくつか勲章のようなものも見られる、それなりに武勲をたてた人間であることがうかがえる静希達は鏡花を端にして一列に並び、城島が一番前に出て対応することにした全員が休めの体勢をとったのを確認すると城島は一歩前に出て口を開く「日本の喜吉学園からまいりました、一年B組一班とその引率教師城島と申します、今日から数日間、どうぞよろしくお願いします」「・・・これはどうもご丁寧に、国家憲兵隊第一部隊隊長、モーリス・ルブラン少佐だ、遠い所よく来てくれた、歓迎するよ」そう言いながらモーリスと名乗った男性は城島の手を握るが、その表情と言葉が一致していない、どこからどう見ても歓迎しているようには見えないのだ今回遭遇している国家憲兵隊というのは軍警察ともいわれる特殊な訓練を課された特殊部隊などを擁する組織だこれは推測ではあるが、モーリスはもともと軍警察にいた人物ではなく、元は軍の方にいた人物ではないかと思えたそして静希が抱いた事柄を、実際にその手を握った城島も抱いていたこれは少々面倒になるなと思いながら笑顔は崩さずにゆっくりとその手を離す「それで・・・ジョーカーはどちらかな?その仮面もとってくれると安心できるのだが?」初対面で顔を隠すというのは失礼なのでは?と付け足したところで静希達は全員一斉に仮面を外す、そして静希が一歩前に出て姿勢を正し笑みを浮かべながら手を差し出した「初めまして『ジョーカー』五十嵐静希です、今回はよろしくお願いします、ルブラン少佐」モーリスはその表情を見て少しだけ不思議そうにしながらも差し出された手をそのまま握手で返すことにした誤字報告十五件分と評価者人数が320人突破したのでお祝い含めて五回分投稿最近本当に大量に誤字報告が来るから気が抜けません、自業自得ではありますがこれからもお楽しみいただければ幸いです

『メフィ、この位置なら見えるか?』『えぇ見えるわ、ちょっと待っててね今召喚陣をよく観察するから』握手して互いに笑みを浮かべながらメフィに召喚陣を読み解かせながら静希はゆっくりと手を離す、とりあえず第一接触は何の問題もなく済ませることができた、問題はここからである「君たちに紹介しよう、今回の実験の責任者を務めている、ハインリヒ・コーヴァンだ、この研究所に勤めている」「初めましてみなさん、どうぞよろしく」モーリスに紹介されるとハインリヒは全員に視線をゆっくりと向けながら軽く会釈をして見せる、愛想がいいとは言えないが研究者ならこれくらい普通なのかもしれないむしろ本来研究者だったエドが友好的というか社交的過ぎるのだ、研究者とはもっと陰湿なイメージがあっただけに、目の前にいるハインリヒの方が研究者らしく見えてしまう細い体に眼鏡、白衣をまとった姿はまさに研究者というべきだろう「少佐、こちらからの要望は伝えたので、私はこれの調整に入ります」「えぇ、こちらは私の方でやっておきましょう」そう言ってハインリヒは計器の中心にある召喚陣の方に向かい何やら作業を始める恐らくは明後日に控えた召喚の最終調整だろう、警護に関してはモーリスに一任されている様だった「ではこれからの話をしよう、何から話せばいいかな?」その言葉に城島はすぐに静希の方を見る、すでに城島は引率としての役割を終えている、これからは静希が前に出る時間だ、本来なら班長である鏡花がやるべき仕事だが、今回ばかりはその役目は静希に譲っている様だった「ではルブラン少佐、今回の警護における人員の数とその種類、そして指揮系統と、我々の処遇に関してお教え願えますか?」「わかった、一つずつ答えていこう・・・」そう言ってルブランは手に持っていた資料からファイルを開き閲覧し始める、おそらくあの中に今回の情報が詰まっているのだろう、直接見ることができれば手っ取り早いのだが、恐らく内容はすべてフランス語で書かれているだろうオルビアが翻訳に関していくら便利でも、文字までは難しい、特にオルビアが学んでいない言語で書かれた文字は読むことができないのだ「まず今回の召喚に対する警護だが、いくつかの部隊の合同で行われることになる、第一から第三までの国家憲兵隊、そして陸軍の二個小隊、そして合同で行っている国の軍人が一個小隊ずつ、合計約三百人の規模での作戦になる」三百人、となると少なめな大隊の規模での護衛という事になる、もっともそれらすべてが協調性を持って行動できるかは別の話だ憲兵隊、陸軍、そして他国の部隊、これらが混じっている状態で協調するという方が難しいだろう、無論協調してくれないと困るのだが「指揮系統はトップが私、そして各部隊に小隊長を任命しそれぞれの指示は私が統括して出すことになっている、無論状況が変わり、通信が困難になった場合はそれぞれの小隊長が指示を出すことになっている」憲兵隊の隊長が今回のことを仕切ることになっているという事は、メインが国家憲兵隊、そして陸軍などはその補佐という事になる、だんだんと今回の状況と、それに対する国の考え方が把握できてきた恐らく今回の召喚に際し、いくつかの国が合同と言ってはいるが、実際のところはフランスがほぼ主動で動き、他の諸外国は資金や機材などを提供した程度なのだろう、つまりはおこぼれにありつければいいな程度の気持ちなのだ派遣されてくる部隊が一個小隊ずつという少なさがその期待度の低さを表している、もし事故があった時に大きな被害が出ないようにその数を減らしているのだそして今回主軸になっているフランスという国に関しては、少々複雑な状況になっていることがうかがえる憲兵隊三部隊、陸軍二個小隊で市内を閉鎖し、周囲を警戒するだけなら確かに十分な人数であると思うが、人外に対しての対応としては数が少なすぎる他の国からの部隊を合わせてようやく大隊規模になるというあたりから何か違和感がある、少なくともまともな対応ではない前回、静希がエドの件でイギリスに赴いたときに駐在していた部隊の数は少なくとも数百人規模だったらしい、そのほとんどが市街地の探索や警備に当たっていたために、実際にエドと対峙できていた人数は数十人程度、それなのに今回フランスが用意した人員は多く見積もっても二百人いるかいないか、明らかに状況を甘く見ているとしか思えない「それから君たちの処遇、というより君の配置に関してだが、今回召喚が行われるこの建物の警備に当たってもらおうと思っている、当日ここには各国、もちろん我が国の官僚も訪れるのでね、万が一は避けたいんだ」一応静希から聞かれたすべてを答え終えたところでモーリスはファイルを閉じて静希や他の班員にも視線を向けた後何か質問はあるかい?と聞いてくる静希からすれば聞きたいことだらけなのだが、まずは一番大事なことをやるべきだ『メフィ、あの召喚陣、何を召喚する物かわかったか?』『えぇ、誰を召喚するかまではわからないけど、間違いなく悪魔を召喚するためのものよ、精度とかは保証しないけど』メフィの言葉に静希がいう事もやることも確定した、今回建物の護衛などやりたいはずもない、というよりやってはいけないのだ、モーリスが言っているようなことをしたいのであればなおさらである「ルブラン少佐、失礼を承知でお聞きしますが、よろしいでしょうか?」「・・・なにかね?」「今回の件、あなたたちはふざけているのでしょうか?こんな状況に何の疑問も持たないとは正気とは思えません」静希の言葉にモーリスは僅かに顔をひきつらせた、静希の後ろで静観していた鏡花たちも表情を変えないように必死だったそれもそのはずだろう、静希が言ったのははっきりとした侮辱だ、お前たちはバカじゃないのかと言っているようなものだ、一介の学生が言うようなものではなく、少佐という立場にあるような軍人に対して発するものではない「・・・私としては君の発言に疑問を持ってしまうな、なぜそのようなことを?」「わかりませんか?まず第一に俺をこの建物の警備に当てるなんてナンセンスだ、そこの召喚陣は悪魔を召喚するためのもの、そんな場所に俺を配置するなんて正気とは思えない」ここには官僚なども来る場所であると言ったのは貴方自身ですよと付け足しながら静希は一瞬召喚陣の方に視線を向ける一見しただけでその召喚陣の本質を見抜いたと勘違いしたのか、モーリスと召喚陣の近くで作業していたハインリヒは驚愕の視線をこちらに向けていた「・・・その理由を聞いても構わないか?なぜナンセンスなどと言う?君は悪魔の契約者だろう?ならばこの場において悪魔に対抗できる唯一の存在と言っていい」「そのことに関しては肯定します、ですがわかっているんですか?仮に悪魔が召喚され、俺と戦闘になった場合、恐らくこの辺り一帯は更地になりますよ」悪魔と悪魔が正面から、本気でぶつかり合ったらどうなるか、静希だって容易に想像できる以前のエドとの戦闘では、エドが常に逃げの姿勢だった、そして彼自身街に被害を出さないように戦っていたからこそそこまで大きな被害は出ずにすんでいただが悪魔が召喚された時点で、その悪魔が暴れだした場合、静希がメフィを対抗策として展開した場合まず間違いなくこの研究所は崩壊するそれだけで済めばいいが、本気同士で戦った場合どうなるかわからないのだ、重要人物が訪れる場所を世界で最も危険な場所にするわけにはいかないのである「召喚が行われる時に俺がそこにいるってことは、召喚された悪魔との正面衝突することと同義です、生憎と俺の契約している奴は誰かを守れるほど器用な奴じゃないんですよ」メフィは攻撃は得意だが防御に関してはからきしの悪魔だ、誰かを守るという行動をとってこなかったためかその全てが攻撃的で何より雑だ、何かを壊さないように攻撃するなんてことは苦手分野でしかないそんな状況をこの場に作ることは、静希も向こうも望むところではない「今回気を付けるべきは召喚される悪魔だけじゃない、それを狙っていると思われる他の契約者もです、仮に俺をここに配置した場合、ほぼ間違いなくそいつはここまで到達します、戦力を後生大事に抱えていても無駄になるだけですよ」静希だけではない他の契約者がこの場に向かってきているという情報は、すでにテオドールを経由してフランスの方にも伝わっているのだろう、モーリスは僅かに思案するような顔をして静希をわずかににらむ「ではミスターイガラシ、君はどうするべきだと?なんの案もなしに否定したわけではないだろう?」「もちろんです、俺の班員も悪魔との戦闘経験が豊富です、勝つことはできなくても時間稼ぎくらいはできる、その場にいる軍の協力があれば官僚が避難する程度の時間は稼げるでしょう」屈強な体を顕現できる陽太だけではなく、変換の能力を持つ鏡花と広範囲にわたり索敵のできる明利、この三人がいれば官僚がいてもすぐに避難ができるだろう、三人だけではなく軍の支援があればなお確実だ「俺は研究所の外、具体的には半径二~五キロ以内の地点を移動しつづけます、各所に配置された部隊からの情報をすべて俺に伝えてくれれば、それらしい情報が届き次第急行します」「それだけの距離があると移動にも時間がかかるのでは?手遅れになったらどうする」「移動手段はすでに用意してありますよ、車より楽で確実に速く動けるのが」あえて明言しなかったが、静希の有する移動手段、使い魔であるフィアは場合によっては車より速く動くことができる、数キロ程度の距離なら数分とかからずにたどり着くことが可能だその程度の時間であれば十分に稼げると踏んだ結果である「俺の提案はこいつらをこの研究所内での警備に、俺は研究所周囲の移動行動をメインにしようと思います、もちろん通信要員を付けていただけるとこちらとしてはありがたいです」静希は自ら通信役としてフランスの人間を付けることを進言した、名目上は各所の通信などの状況などを静希に伝える要員でしかないが、実際は静希の動向を監視するための存在だ自らそれを言い出すことでアドバンテージを握ろうとしていることは明白、だがモーリスとしても好都合な発言に反対しかねていた「ふむ・・・道理には適っている・・・だが悪魔の契約者ほどの戦力を遊ばせるのはこちらとしても望むところではない、こちらの指示には従ってもらおう」「・・・ハッ、何を言い出すかと思えば・・・ではルブラン少佐、今一度失礼を承知で申しあげます、貴方はふざけているのですか?」先刻も告げた言葉をもう一度繰り返すことで静希は強めにモーリスを挑発する、そろそろ自分の役割が来るだろうかと鏡花がその静希の言葉や一挙一動を観察する中、静希は心底馬鹿にするような笑みを浮かべている「こちらは真剣だ、君こそふざけているのではないのか?君は自分がどれほどの戦力になるかわかっていないのか?」「どれほどの戦力になるかをわかっていないのは貴方たちの方だ・・・一つお聞きします、貴方たちは悪魔との戦闘経験はありますか?」それは静希がすでに確信を持っている内容だった、だがあえて聞いた、それを認めさせるために、そして主導権を握るために「・・・回答するのであれば・・・ない、我々憲兵隊を含むフランスの軍人は悪魔との戦闘経験はない」すでに確信を持っていたために静希は驚かなかった、だからこそ言わせたのだ静希が確信を持った理由は、何も隊員たちの反応だけではない、今回の召喚に対してのフランスという国が派遣した軍の数でも予想できたことだ明らかに用意した数が少なすぎる何か思惑があったのかもしれないが、召喚に際し万が一があることを考えればもっと軍を用意してもいいくらいだ、それは今回協力体制にある諸外国にも言えることであるだからこそ、静希は予測できた、フランスには悪魔を相手取った経験がないと「そう、貴方たちは悪魔との戦闘経験がない、なのに悪魔の力がどのようなものかを、その力の本質を知っているというのですか?」「・・・他の国からの情報提供はあった、最低限は理解している」「理解している?聞いただけでそれが理解できるなら苦労はしない、チェスの駒の動き方も知らない人間が、チェスで勝てるわけがないだろう?」そんな人間の指揮下に入るなど冗談じゃないと言いながら、静希はモーリスを睨むその瞳は冷え切り、脅迫という域を超え僅かに殺気さえ混ぜた物であることを、モーリスは感じ取っていたそして彼の勘が告げている、この少年は危険だと静希が意図的にそのように振る舞っているのだとはいざ知らず、いや仮に振る舞っていることを知っていたとしても、その勘は正しく働いていると言っていいだろう「では、君は私の指揮ではなく、自らの意志で行動すると?」「当たり前です、処女にリードされるほど経験不足ではないですから・・・いえこの場合は童貞と言った方がいいでしょうか?」あえて挑発的な言葉を並べることで、モーリスに正常な思考をさせないようにしている、相手を揺さぶり、相手の隙を見つけ、付け入るいうのは至極単純だが、実際実行するのは無理難題と言えるだろう、静希は今までの経験から大人に対しての揺さぶり方や対応の仕方を学んでいる主にテオドールとのやり取りのおかげだろうが、敵対とまではいかないまでも、信用ならない協力関係にある相手にどのような態度で、どのような声で、どのようなセリフで迫ればいいのか、すでに覚えてしまったのだ「では彼らは?彼らも君の指示で動くのか?」「その予定です、有事の際は俺の指示で動いてもらいたいですね・・・というか他の部隊全体の指示も俺が出したいくらいですよ」その言葉に鏡花はわずかに反応した、事前に静希が言っていた内容だ、まだ弱いニュアンスだが、このワードが含まれるという事は自分の出番が近いことを示している「・・・それは容認しかねる、今回の指揮は私が」「悪魔相手の戦い方を知らない人間がどうやって悪魔相手の指揮をするんです?部下を無駄死にさせるつもりですか、対無能力者や対能力者とは全く違う動きをしなければいけないんですよ?それをどうやって行うつもりですか?」静希の言葉に返す言葉がないのかモーリスは眉間にしわを寄せて静希を睨み歯噛みする実際彼は悪魔の力の概要は知っていてもどのように対処するべきであるかまでは知らない当然だろう、悪魔という存在自体に遭遇したことがないのだ、知識でどのような存在であるか知っていても、その力や生態、実態は知らないのだ、そんな状態で的確な指示ができるはずがない眼前にいる悪魔の契約者である少年は、それら全てを知っている、実際に戦闘経験もある、恐らくどのように対処すればいいのかも知っているだろうだがだからと言って指揮権を譲渡するなどとできるはずがない、してはいけないのだ、今回の警護の指揮を任された人間としてのプライドがある、何より責任がある、それらから逃げ出すことは軍人としてできなかった、だが静希が言うことが事実であるのも彼自身納得していただからこそ揺れている、どうするべきなのか「あなたが無能とは言わない、むしろ今回の統括の指揮を任されているんだ、優秀な人材でもあるんだろう、だが今回のことに関しては身を引け、主な指示は俺が出す、あんたはそれに従っていれば」「そこまでよ静希」静希がさらにモーリスを揺さぶろうとした瞬間、凛とした声がこの空間に響く一度持ち上げられ、さらに落されかけ不安定になったモーリスはその声にはっと我に返るその声は静希の後ろ、一番端に立っている少女、一班の班長である鏡花から放たれたものだった「あんたの指示が的確であるのは認める、だけど指揮や命令は信頼関係があって初めて成り立つのよ、仮にあんたが命令したってここの部隊の人は従わないわ」「・・・だからって無駄死にさせていいはずがないだろう?ここの人間は悪魔に対して初心者もいいところなんだから」静希が不機嫌そうな声を出しながらゆっくりと鏡花の方に振り返る、最初不機嫌そうな顔をしていた静希だが、モーリスにもハインリヒにも見えないような顔の角度になった瞬間に満面の笑みになる最高のタイミングだった、静希がこれ以上揺さぶりをかけていたらもしかしたらモーリスは本当に指揮権を譲渡してしまっていたかもしれない、あそこで静希を止め、反対意見をだし、さらには指揮において必要な事柄を説くことでモーリスの自信を取り戻させることもできただろう静希が思い描いていた以上のタイミングに、笑みがこぼれてしまったが、鏡花はその顔を見てとりあえずあのタイミングで合っていたのだなと安堵するが、それを表情に出すことはなかった「確かにあんたのいう事は正しいわ、でも強引すぎよ・・・もう少し歩み寄ろうってことをしなさい」「・・・例えばどうしろってんだ?アドバイスしたところでその意味は五割も伝わらないぞ?」いくら他人からの助言があったとしても、実際に体験したことのないことではその助言は半分の効力も持たない思慮深い人間や、想像力豊かな人間がいて始めてそれを理解できるのだ、それだけの人間はほんの一握りに限られる、そんな人間が都合よくこの場にいるはずがない、それはこの場にいる全員がわかっていた「妥協案は私が出す、あんたは少し大人しくしていなさい、命令よ」「・・・アイマム」鏡花の鋭い言葉に静希は手をあげて引き下がる、ここまで完璧な事の運びだ、さすが鏡花と褒めちぎりたいところだが、今は演技の途中、それをこれ以上顔に出すわけにはいかない「ルブラン少佐、まずは私の班員が失礼な発言をしたことをお詫びします、申し訳ありませんでした」「・・・あ・・・あぁ・・・」一歩前に出て鏡花は自ら頭を下げる、部下の失態は上司の失態、それを体現するかのように班長として、班員の失態を詫びる無論これも演技でしかないことだが「ですが、静希が言ったこともまた事実です、あなた方は圧倒的に悪魔への対処法を、そして悪魔自体のことを知らなすぎる」上げてから落とす、それに関しては鏡花もやることは同じだ、と言っても静希より少しマイルドなやり口で、そして今まで静希が猛攻をかけ、作られた隙に割り込むような手法でそれは行われる「ですので、全ての指示に従えとは言いません、ですが有事の際、静希や我々がこうしたほうがいいという助言を出した時はそれに素直に従ってほしいのです、そのほうが恐らく被害は少なく済むし、こちらとしてもありがたいです」「・・・まぁ、そのくらいなら・・・だが事が起こるまではどうするつもりだ?我々の指揮下に入るのか?」その疑問に鏡花はわずかに視線を静希に向ける、その視線に気づいたのか、静希は顔をそむける、それがどういう意味か鏡花は把握してからため息をつく「うちのはどうやら指揮下に下るつもりはないようです、その場合は私にこうしてほしいと告げてください、それに理があるようであれば、私が静希を説得します」「・・・そうか、では頼むとしよう」先のやり取りで静希の言う事を聞かせるのは自分では無理だと察したのだろう、モーリスは素直に鏡花の申し出を受諾するこれでいい、このやり取りでモーリスの中で静希の評価は、強力ではあるが扱いにくい駒として認識された、こうすることで無理難題を突き付けるということ自体ができなくなっているのだ常識人としての鏡花の立ち位置とその振る舞いから、今回の内容に関係のない命令を出すことができなくなる、しかも自分たちで判断してそれが無意味であると察したら拒否できるだけの条件もそろったさらに言えば、鏡花の言葉にはこういう意味も含まれている説得する、それはつまり安定して話ができる状況であるなら従わせられるという事、逆に言えば説得できないほどの緊迫した状況であれば自由に動けるという事である今回のこの初対面での応酬に関してはあまり作戦は練っていなかったのだが、鏡花はうまく静希が持って行きたい方向へ話を進めてくれた、判断能力と思考力は静希に引けを取らないのはさすが鏡花というべきだろうその場にいる陽太や明利、そして城島が微動だにしないことからこのやり取りがいつものことであるという印象もつけられた、これで今回の依頼の中で静希達の行動の自由はほぼ確約されたようなものであるかなり強引に見えてしっかりと順序良く攻略していった、もし事前に説明した会話を聞かれていたらすべて理解されただの猿芝居にしかならなかっただろう「ところでこれからの行動はどのようにするつもりだ?まだ召喚までの時間はあるが」モーリスの言葉に鏡花と静希は視線を合わせ、その後明利の方へ視線を移す「時間は限られていますから、まずはうちの能力者の索敵網を構築するつもりです、はじめはこの建物、それから明日にかけてこの周辺まで広げる予定です」「・・・そうか、連絡係は必要か?」「・・・そうですね、一応私たちの近くにいてくれればいいですよ、そのほうがそちらも安心できるでしょうから」あえて邪魔な監視役を付けたのにも理由はある、先程のやり取りのせいでモーリスは自分たちに対して警戒の色が強くなってしまっているのだ自由な行動権を手に入れた結果の警戒であるため、むしろその程度であれば受け入れるべきだが少しでも有利にするには相手に安心感、あるいは油断を誘わなくてはならない監視役を付けているのだからその程度の行動に関しては問題ない、そう思わせておけばいいのだ状況はすでに始まっている、仕掛けをするためにも建物や市街を回るのも必要なことだし、それを最初からやるつもりではあったそれを相手にどのように感じさせるのかがネックだ、何をやっているのかわからない状態でうろつかれるより、やっていることを明確にしておいた方が信用につながる厄介なじゃじゃ馬役は静希が、話の分かる班のまとめ役として鏡花がそれぞれいることで、静希以外の班員の重要度をあげたのだ、それはこれから役に立つ、事が起こり事態が切迫すれば切迫するほどに誤字報告が十五間分溜まったので四回分投稿もはや毎日四回分投稿している気がしてなりません、気のせいだと思いたい今日この頃これからもお楽しみいただければ幸いです

挨拶もそこそこに静希達は一度モーリスとハインリヒに別れを告げ、今いる研究所を一通り回ることにした大きな実験を行える研究所というだけあってとても広く、地図を片手に動かなくては迷ってしまいそうなほどだった「まったく・・・肝が冷えたわよさっきのやり取りは」「悪かったって、でもいい具合に話を進められたな、さすが鏡花姐さん」オルビアの簡易翻訳を切り、単純な日本語だけで会話することで周りになにを言っているのかわからなくさせ、万が一日本語ができる人が近くにいた場合のために小声でそう話す二人変わっていく状況に即座に対応して相手の考えを読み、先回りして会話を構築するなんてことは誰にもできることではない鏡花が天才と言われるのは何も能力だけの事ではない、単純な思考戦においても鏡花はたぐいまれなる才能を発揮するのだほんの少しの助言だけであそこまで話を持って行ける人間はなかなかいない、本当にこの班に鏡花がいてよかったと思うばかりである「でも静希君・・・私達だけ研究所の中にいるっていうのは・・・ちょっと・・・」「そうだぜ、俺らだけ蚊帳の外かよ」明利と陽太の言葉に静希は苦笑する、危険から遠ざけるという意味でも研究所に置いておきたかったというのもあるのだが、本当の理由はそこではない「お前らには召喚の時変な動きをする奴がいないかだけ注意してほしいんだよ、悪魔を利用する奴が外部だけにいるとは限らないからな」「あー・・・なるほどね、だからここに残らせるような事言ったんだ」静希が本当に戦闘を行おうと思ったら単身だけではなく複数人数での連携を重視した策を用いるはずである、だが今回はそれをしないもちろん三人の身を案じてという意味合いもあるのだが、これ以上面倒を増やさないためというのもある悪魔の力は強大だ、その力を利用しようとする人間はいくらいても不思議はない、だからこそ静希は信頼できる人間にこの場を任せようとしているのだ「でもそうすると私たちが危険じゃない?殺されるかもってことでしょ?」「もちろん考えてあるよ、お前達には邪薙を付ける、万が一にも危険がないようにな」「・・・静希君・・・それは・・・」邪薙を付ける、それはつまり静希が有する防御手段を鏡花たちに渡すという事であり、静希の防御力の著しい低下をも意味するこれから悪魔の契約者とぶつかるかもしれないのに、自らを危険に晒すという行為に明利は静希を心配そうに見つめていたそして心配しているのは明利だけではない、鏡花も陽太も少なからず思うところがあった「・・・さすがに賛同できないわね、人間相手と悪魔相手、どっちが危険かはわかってるつもりよ、あんたにかかる負担が多すぎるわ」「そうでもないさ、俺にはメフィもオルビアもフィアもいる、これだけいれば生き残るくらいはしてみせるよ、お前らの場合犯罪者予備軍と戦うかもしれないんだ、万全を期すならお前達の方に人員を割くべきなんだよ」静希が懸念しているのはその予想通り悪魔と契約しようとトラウマの再現を行い心臓への細工を成功させた場合だもしそうなったらただでさえ少ない人員が減るうえに、相手にしなくてはならない悪魔の契約者が二人になることになる無論二人を同時に相手どる必要はないかもしれないが、研究所の外と研究所の中、その二か所からの挟撃になってしまう事だってあり得るこれは最悪のケースだが、それを防ぐためにも召喚陣付近に人員を配置しておく必要があるのだ鏡花の言っていることももちろん間違いではない、むしろ正しいと言える相手が悪魔の契約者である以上、その危険度は並の能力者のそれとは一線を画す、そんな状況で自らの守りの要を譲渡するなど正気の沙汰ではないだがだからこそ静希はそれをするのだ自らが負う危険と、万が一に起こる最悪の事態を想定したとき、こうするのが最善だと静希は判断した、負担が増えるのは承知の上、それでも止めなくてはいけないこともあるのだ「・・・はぁ・・・もう聞きそうにないわね」「悪いな、今のところこれが最善手だ、その代り大野さんたちはこっちについてもらうから、それなら少しは安心だろ?」安心できるはずないでしょと鏡花はため息をついて見せる、大野たちのことを信用していないわけではないが、それでも悪魔の前には無力に等しい対抗するには同じような人外が必要不可欠なのだ、その程度のことは鏡花にだってわかる「ならメフィに伝えておきなさい、死ぬ気で静希を守ること、でないと明利や雪奈さんが激怒するわよって」「オーケー、伝えておくよ」静希の言葉に反してすでにその言葉を聞いていたメフィはくすくすと笑う『あらあら、ひょっとして責任重大な感じになってる?』『そうだな、しっかり守ってくれよ?』メフィは笑い、静希も笑うこの二人の独特な信頼関係を理解できるのは本人たちだけだろう、死ぬ気で守ると言うものではなく、守ることが当たり前の存在などそうそうないのだ、それが互いにそうであるというのが不思議な関係と言えるだろう一通り研究所を回りながら明利の種を配置していき、研究所全体を明利の索敵下に置くと、静希達はとりあえず一度ホテルの方に戻ることにした思ったよりも研究所が広く時間がかかってしまったのだ、すでに辺りは日が暮れ、暗くなり始めている近くの軍人に頼んでホテルまで車を出してもらい、静希達が宿泊するホテルまで戻ってくると全員が一息つくことができた「案外時間かかったわね・・・とりあえず一休みしたいわ・・・そろそろ眠気が限界だし・・・」「時差の調整も楽じゃないな・・・それに腹減った・・・昼から何も食ってないしな・・・」昼と言っても日本時間のそれであるためにもう十時間以上何も食べていない計算になる、眠気も襲い掛かっているというのに全員が空腹状態のためにあまりいいコンディションであるとはお世辞にも言えなかった「まずは食事にしよう・・・それが終わったら軽くブリーフィングをする、それまでは我慢だな」欠伸を噛み殺しながら静希達は部屋に手荷物を置いてからホテルの中にある食堂に向かうそこにはすでに大野たちがいて夕食を楽しんでいた「やぁ、もう今日の用事は済んだのかい?」口に食べ物を含みながらそんなことを言っている大野に苦笑しながら静希達は彼らの近くの席に座り込む「えぇ一応は、大野さんたちはどうでした?『フランス観光』は」「ん・・・なかなかだったよ、あまり近くまではいけなかったけどしっかり見ることができた」それは何よりと言いながら静希は給仕の人間に夕食のメニューを持ってこさせる、何が書いてあるのかほとんどわからないが、丁寧に写真がついているのが有難かった「それはそうと、平井さんや荒川さんはどうです?今後のことについて考えはまとまりましたか?」今回初めて静希と行動を共にする二人に話を振りながら静希達は次々と料理を注文していく、空腹であるために量が少し多いが、こういったホテルの料理は量が少なめに設定してあるためむしろこの程度で丁度いいのだそして話を振られた両者は複雑な表情をしながら視線を合わせる「正直・・・まだ決めかねてるって感じだな・・・好き好んで面倒事に首を突っ込みたいわけじゃないし・・・」「・・・そうね、私達だって命が惜しいし・・・」今日一日で大野と小岩にいったい何を吹き込まれたのか、二人はあまり乗り気ではないようだったそれはそれで無理もないことだ、考えを強要するつもりはないし、彼らがそのつもりであるというのなら静希も無理にとは言わない「わかりました、ではお二方は可能な限り作戦範囲外の地点での索敵に回ってもらいます、危険は少ないと思いますよ、大野さんと小岩さんはこの後軽いブリーフィングを行うので俺と陽太の部屋に来てください」静希があっさり引き下がってくれたのが少し意外だったのか、平井と荒川は少し申し訳なさそうな表情をしている自分たちを頼りにしてくれていたのだろうかという気持ちがないわけではない、期待に応えたいという気持ちも十分にあったがやはり優先順位は自らの安全が第一だ危険を冒してまでだれかのために行動しようという気概は二人にはなかった本来はこれが普通なのだ、誰かのために自らを犠牲にできる人間の方が稀なのである「そっちの用件はどういう感じで終わったの?あんまりいい結果じゃないの?」恐らくは一緒にいる鏡花たちの表情からそう判断したのだろうが、全員の表情が浮かないのは空腹と眠気によるものが大きい、もちろん鏡花はこれから先のことを憂いているという事もあるのだが、まず空腹と眠気が一番こたえているのだ「そうでもありませんよ、とりあえず主導権は得られたかと・・・まぁ事が起こるまではお手並み拝見ですね、それまでは大人しくしてますよ」今度は一体何をしたのだろうかと、以前の行動の一部を知っている二人からすれば苦笑いしか出てこないが少なくともそれが必要なことであるという事はわかる立場が立場なだけに舐められてはいけない、利用されてはいけない、だからと言って出しゃばりすぎてもいけない、静希は非常に微妙な立ち位置にいるのだ今回は同級生の仲間がいるという事で幾分かその負担は軽減されているだろうが、それでも静希にかかる負担は大きい、戦力的な意味でも精神的な意味でもそんなことを話している間に静希達が注文した料理が運ばれてくる、ようやく食事にありつけると静希達は次々と料理を平らげていった「悪いな、大野、小岩・・・あんまり力になれなくて」「ん?あぁ気にすることはないんじゃないか?彼ならそのことを把握したうえでうまく利用するだろうさ」「利用するって言い方やめなさい、五十嵐君に失礼よ」少なくとも静希は自分に協力してくれる人間を利用するという感覚で動かしたことはないあくまで協力という関係にある以上、最低限の気は使うし危険が少ないように配慮もする無論利用しているという事を否定するつもりはないが、言いかたを変えるだけでここまで胡散臭く聞こえるのも珍しいものである「あんたたちは大丈夫なの?危なくないの?」「・・・ん・・・まぁ大丈夫なんじゃないか?そこまで踏み込むつもりはないし、何よりそこまでさせてくれるとも思えないし」大野は静希との付き合いは短い方だが、静希がどんな人間であるかはおおむね把握しているつもりだった、むやみやたらと人を巻き込む性格ではない上に、誰かが傷つくことを望むタイプでもない、好青年と言うかどうかは判断に困るが、嫌いなタイプではないのは確かだった夕食を終えた静希達は軽く小休憩をとってから静希と陽太の部屋に集まっていた部屋に盗聴器や隠しカメラの類がないのを確認してから人外たちを出すとその密度が一気に上がるがその場にいる人間は一切気にしていないようだった「それじゃ一通り今日あったこととこれからのことを話していきたいんですけど・・・大野さんたちから何かありますか?」「そうだな、よさそうな店をいくつか見つけたよ、この一件が終わったらそこらで買い物とかしたいなぁ」大野の言葉に全員の視線が集中し、あきれ返ってため息をついてしまうものまでいる始末である「・・・小岩、お前の同僚はいつもこんな感じか?」「いえ・・・場を和ませようとしたのではないかと・・・」城島の鋭い言葉に小岩は申し訳なさそうに項垂れる、彼女としてもこんな発言をするとは思ってもみなかったのだろう普段どのような対応をしているのかは知らないが、今回ばかりは擁護できないようだった「まぁ冗談はさておき、研究所周囲の街並みとしてはやっぱり開けてるところもあれば複雑な場所もあったよ、これだけの広さとなると隠れたりするのに苦労はしないだろうね」さすがに店だけを見て回ったなどと言うことはないようで、この辺りの地図を広げて潜伏できそうな場所や開けている場所などを一つ一つ書き記していく時間があったとはいえ随分ハイペースで見て回ったようだ、それなり以上の成果と言えるだろう「一つ一つ確認できればいいけど、それは明日の仕事になりそうですね・・・他に何か気になったことは?」「そうね・・・人通りに関してなんだけど、まぁ当然と言えば当然だけど大通りは結構人がいたけど裏通りはあまり人はいなかったわね、浮浪者を時折見たくらいかしら」やはりというかなんというか、平日という事もあって夕方になればそれなりの人はいるようだ、召喚が行われる当日ともなればもっと人は増えるかもしれないそんな中で危険人物だけを発見するというのは至難の業だ、恐らく交通を遮断した後が勝負になるだろうホテルの人に何とはなしに聞いたところ、事前にその地域の交通を完全に遮断することはかなり前から触れ回っているらしく、当日は一般人は完全には入れないようにするつもりらしい無論百%というわけにはいかないだろうが、一定区域内の不審者を見つけるのが楽になるのは間違いないだろう軍によって交通規制がされる場所を線で印をつけ、その内側の索敵を密にした方がよさそうだと考える中、今度は大野たちが口を開く「そっちはどうだったんだい?こっちの軍人さんたちと話はしたんだろう?」「えぇ、一応好き勝手動けるようにだけはしておきました、今後どうなるかは事態が動いてからですね・・・それまでは下準備って感じでしょうか」事件が起きてから本格的に動くとしても何もできないわけではない、何よりせっかくの時間的猶予があるのだ、それを無為に過ごすことはないエドからの連絡が来たら彼とも話し合いの場を持ちたいところである、今どこにいるのかまでは把握できないが、恐らく明日辺りにはこちらに到着するだろう「・・・ちなみに今回も監視はつくの?」「えぇ、こっちからお願いしました、そのほうが相手も安心できるでしょうし、まぁ有事の際は振り切りますよ」軍の配置させた監視を簡単に振り切るというあたり静希がいかに場馴れしているかがわかると言うものである監視をする人間の能力にもよるだろうが、ほとんどの場合において静希を監視し続けるというのは難しいだろう静希はそれをわかっている、自分の実力を把握したうえでそう言っているのだ敵に回すとこれほど厄介な人間はいないなと実感しながら今度は鏡花がゆっくりと口を開く「今のところ分かっているのはフランスの軍は悪魔との戦闘経験がないという事です、もし目標が接敵した場合こちらの考えや指示を優先するように言ってはおきましたが・・・」「そう簡単には従わないでしょうね、一応向こうにも軍としてのプライドがあるんだから」小岩の言葉にその場にいたおおむね全員が同意した軍人とは厄介なものだ、良くも悪くも責任は付きまとい、その分誇りがある同じ国の軍の中でもそれぞれが反目し合い、協力できないような状況が多々あり得るのが軍隊と言うものだ今回モーリスは静希達の意見に賛同した、その為彼の所属である憲兵隊に関してはある程度こちらの思い通りに動いてくれると予想するが、他の部隊、具体的には陸軍や他国から派遣された部隊に関してはその確証はないいくらモーリスが命令したとしても、他の場所や人間から特別な指示を受けていた場合そちらを優先する可能性があるとはいえ軍に置いて命令無視は重罪だ、場合にもよるがほとんどの軍人にとって上官の命令は絶対なのであるそして直接の上官であればそれは確かに絶対なのだが、直接の上官ではないモーリスの指揮に対しどれだけの人間が素直に従うかわかったものではないなにせ複数の国籍や所属の部隊が入り混じる状態だ、命令無視をする部隊があっても何ら不思議はない今回のような面倒なイレギュラーな状態が一番嫌いな静希としてはどうしたものかと悩む種となってしまっていた軽く今後の流れについて話した後、大野と小岩は自分の部屋へと戻っていった、その場に残った鏡花をはじめとする一班の人間はため息をつきながら眠気と戦っていた明日からまともに行動するためには完全に時差を調整した状態が好ましい、その為にもう少しだけ遅くに就寝するつもりだったのだ「それにしても人間って随分とややこしいのね、いちいち面倒なプライドだの建前だの用意しなきゃいけないんだから」「そう言うな、我らとて誇りがないわけではないだろう、それと似たようなものだ」今日のやり取りを見ていた悪魔の率直な感想だったのだろう、学生である静希からしてもその感想は同意するが、面倒なことにそうやって現在の社会は成り立っているのだ軍のそれに比べれば随分と楽なものではあるだろうが静希達にだってプライドに近しいものはある、軍と違うのは組織としてのそれではなく個人のそれに近いという事である「悪魔にだってプライドはあるんでしょ?なんかないの?プライドのために戦ったとかそう言うエピソード」眠気を抑えるためか、鏡花が話を振るとメフィは腕を組んで考え出す記憶の中に該当するものがあるか探しているのだろうが、数秒経っても該当するものがないらしく唸り続けている「ん・・・単に相手がムカついたから戦ったっていうのはあるけど・・・そのせいで自分が苦しんだことはないわね、プライド優先にして負けたんじゃ話になら無いもの」悪魔の世界には社会や組織と言うものが存在しないのだろうか、個人としての見解だけではなく、集団における立場や認識が人間のそれとは圧倒的に違うような気がした思えば当たり前のことかもしれない、人間が社会を作るのは言ってしまえば弱いからだ動物などが多く群れを成す理由、それは一個体の能力だけでは生存することができないのが最大の理由である、だからこそ群れ徒党を組み、支え協力し合って生きていくそうして長い時間を経たことで人間は社会と言うものを生み出した、結果その社会が複雑になり個人の見識を超えた立場と言うものを作ってしまっているのだ個体としての能力が高い悪魔はそもそも社会と言うものを作る必要がなかったのだろう、だからこそこういう面倒な事態を見ると不思議がるし、徒党を組むことによってようやく完成した文明と言うものに興味を引かれるのだ一人の天才が社会の基盤を作ったとしても、それを支える大量の凡人がいなくては社会は成り立たないこの人間社会はほんの一握りの天才たちが技術や考え方を広げ、それを凡人たちが作り支えてきただが悪魔の社会はいわば天才しかいない世界だ、そんな世界で天才たちが徒党を組むとは思えない、互いがそれぞれ研鑽する対象である以上、仲良しこよしとはいかないのだろう特に我が強い悪魔ならなおさらだ、外見も性格も能力も実力もそれぞれ違うのだ、メフィ曰く格差的なものはあるらしいが、それは単純に実力で決まるものらしく人間のように血縁だとか外見だとかでの差別はほとんどないらしいそう言う意味では平等であるように見えるが静希はそんな世界はごめんだった「というかこれは私の個人的な感想なんだけどさ、何で一つの物事に一緒に取り組もうって言ってるのに実際そうしないわけ?最初からお前とは協力できないとかはっきり言えばいいのに」「そこはほら、立場とかあるんだよ、表向きは仲良くしておかないといろいろ面倒だったりするんだ」静希の返答にメフィはそこら辺がわからないわぁと腕を組んだ状態でふわふわと宙に浮きながら唸っている悪魔からしたら外見上の付き合いなど意味の無い物なのだろう、いいたいことをはっきり言えるという意味ではよいことなのかもしれないが、その分必要のない争いを巻き起こすのも事実だ「ちなみにあんたって悪魔の中ではどれくらい強いわけ?上の方って言ってたけど」「気になる?そうね・・・私に勝てる悪魔って言ったら結構限られると思うわよ?もちろん一対一でハンデなしの状況に限るけどね」ハンデ、メフィはそのように言葉を濁したがこの場合のハンデとは静希のことだ人間を守りながら戦うというのは悪魔にとってそれなりのハンデになるという事でもある、静希達能力者で言うなら無能力者を守りながら戦うと言っているようなものだそんな状況では仮に格下でも負ける可能性がある、それを理解しているのか鏡花はふぅんと息をついて静希と邪薙の方を見る「今回の相手がどんなかは知らないけどさ、そんな状態ならなおさら邪薙を私たちにつけるべきじゃないんじゃないの?当人としてはどうなのよ邪薙」神に対して当人というのは表現として正しいかはさておいて、邪薙は口元に手を当て少し考えだす「ふむ・・・シズキの言葉にも納得できるしキョウカの言葉も納得できるものだ、ならば私はシズキの考えを支持する、いくら我々で慣れているとはいえお前たちはただの人間だ、脅威にさらされたときに最も危険なのはお前達だろう」邪薙の言うようにいくら鏡花たちが悪魔をはじめとする人外たちに慣れているとはいえ所詮はただの人間、本気の一撃を受ければそれだけで死んでしまうかもしれないのだ万が一の事態は起こしたくないという静希の考えを基にするならば、その判断は正しいものであるように思える「もう少し信仰があればもっと強い力を使えるのだが・・・力不足なのが嘆かわしいな」「そう言うな邪薙、いつも助けてもらってるんだ、あんまり多くを望むのは贅沢ってもんだろ」そもそも人外を引き連れているという状況が贅沢にもほどがあるという事実、静希は理解しているからこそ人外に必要以上の要求はしなかったあまり頼りすぎるとダメ人間になってしまうと静希もなんとはなく察しているのだその日フランスの時間で二十二時ごろに就寝した静希達は泥のように眠り、時差の調整をおおむね良好に行うことができた飛行機の中で仮眠をしていたおかげか、それほど倦怠感もなく二日目の朝を迎えることができたのは幸運と言えるだろうとはいえ慣れない外国の朝、体にわずかながら違和感は残っている体の調子を確かめるべくストレッチをしてから両腕の調子も確認していく左腕はいつも通り、右手に関してもほぼいつも通りだ、不調はない大きく伸びをして頭だけではなく体も起こそうとするがやはりどこか違和感がある睡眠をとることで起きている時間をずらすことはできても体内時計の調整にはもう少し時間がかかるという事なのだろう、無駄に精密にできている人間の体に少しだけ感動しながら未だ眠りこけている陽太をベッドから叩き落とすことで起こして見せた「うぇあ!?・・・もう朝か・・・も、もうちょっとだけ」「とっとと起きろバカ陽太、さっさと飯食って動くぞ、時間ないんだから」ホテルに置いてあった時計を見てみると時間は朝の七時半、今からいろいろ準備をしたり食事をすることを考えると行動開始できるのは遅くて九時と言ったところだろうか研究所の周囲に索敵網を作ることを考えると時間的にはぎりぎりになるかもしれなかった寝ぼけている陽太を引き連れて食堂まで向かおうとするとちょうど女子二人も起きたのだろうか、扉が開いて僅かに寝癖を付けた明利と髪を下ろした鏡花が現れる「あ、おはよう静希君・・・よく眠れた?」「あぁ、一応な、そっちも眠れたみたいだな」「まぁね、そっちのバカは何でまだ寝ぼけてるのよ」「あー・・・鏡花か・・・うー・・・眠い」この中で完全に覚醒していないのは陽太だけのようだが、とりあえず食事をとらないと頭も回転しないという事でホテル内にあるバイキング形式の朝食をとることにした食堂に向かうとそこにはすでに城島が食事をとっている最中だった、自分達よりも早く行動するのは教師として当然なのだろうが、まったく疲れなどを感じさせない顔色をしていたこの人は本当に自分たちと同じ人間なのだろうかと疑ってしまう、城島は体だけで言えばエルフなのだが、そこは流すべきだろう「おはようございます先生、早いですね」「ん・・・まだ慣れていないという風だな・・・まぁお前達もそのうち慣れるだろうさ」そう言いながらパンを口に含む城島、慣れているというのは海外の話だろうか、それとも仕事での早起きの話だろうかとりあえず静希達も朝食の料理をいくつか皿に盛り、城島と同じテーブルに座ることにした「今日は幹原の索敵を広げる作業と言っていたな、具体的にはどのあたりを行うんだ?」「研究所周りと、軍が封鎖する地域全体です、その中に誰かが入ってきたらすぐにわかるようにするのが理想ですね」事前に封鎖地域がわかっているというだけでずいぶんと作業は楽になる無論時間が余れば他の地域にも種を蒔くつもりではいるが、その余裕があるかはやってみないことにはわからないなれない市街地を歩くというのは案外時間がかかるものだ、地図を確認しながらだとなおさらである「必要ならあいつらにも協力してもらうといい、その程度なら事情を知らなくてもできるだろう」「そうですね、人手は多い方がいいですし・・・ちなみに先生」「私は非常時以外は動くつもりはないからそのつもりでいろ」手伝ってくれないのかと聞く前に釘を刺されたことで静希は苦笑してしまうさすがに危険な状態でもないのに教師に手を借りるのはNGだったかと少しだけ残念そうにしながら静希は朝食を口の中に放り込んでいくやはり日本のそれに比べると濃い味付けだが、不味くはない、高級なホテルだけあってそこそこいい食事を提供してくれるようだった「ほら陽太、ちゃんとバランスよく食べなさい、これとこれも」「うい・・・わぁってるわぁってる・・・」まだ寝ぼけている陽太のために鏡花が甲斐甲斐しく食事を盛り付けているのが何とも微笑ましい、今陽太の意識があるかどうかは定かではないが、このままだとそのまま食事を食べさせる勢いだった比較的朝が弱いというわけではないだろうが、さすがに昨日長時間起きていたために眠気がまだ強いようだったかくいう静希も少しだけ眠い、だが無理にでも行動していればそのうち眠気は飛ぶと考えていた「朝飯をここまでガッツリ食べるのって久しぶりかもな・・・普段はパンとかばっかりだし」「そうだね、朝は走ったりするから時間ないしね」静希と明利は普段早朝にランニングをしているために朝食をじっくり食べるという事はあまりない携帯食とまではいかないが簡単に摂れる食事で済ますことが多いためにここまで多くの食事をとるというのは実に久しぶりだった「今日は明利にがっつり働いてもらうからな、しっかり食べておけよ?」「うん、任せて」明利の頭を撫でると嬉しそうにしながら小さくガッツポーズをして見せる、索敵に関してはさすがに自信がついてきたのかその表情は明るい今日は長い一日になりそうだと思いながら静希は紅茶で口の中にある食べ物を一気に胃の中へ流し込んだ朝食を食べた後、大野たちとも合流し二人一組になって明利の用意した種をとにかく配置していく作業に移ることにした静希達は主に軍が交通規制を行う研究所の周辺を、大野たちは交通規制の外側を行うことになった種を蒔く上で必要な街路樹や隙間などは、幸いにしてレンガ造りの石畳が多いため探すのに苦労はしなかったとはいえ単調に蒔いては印を付けの繰り返し、時間があるとはいえどなかなかに面倒な作業だった天気も良く、さわやかな風が吹くとはいえ未だ二月、僅かに寒気が残るこの季節に動き続けるというのは地味に根気がいる作業といえるだろう通信用の人材として鏡花の下に一人監視がついているが、静希達の方にはついていなかった、この班をまとめているのは鏡花だという錯覚を起こさせた結果だと言えるだろう静希明利、鏡花陽太、大野小岩、平井荒川の四つのチームになって少しずつ索敵範囲を広げていくとはいえ、やはり市街地、一カ所に種を蒔くだけでは確実な索敵ができないことがある明利の索敵は準備さえすれば広範囲に行き渡らせることができるが、詳細な部分までは一つの種では難しい例えば一カ所に種を置いてもそこが遮蔽物が多い場所だとその索敵の効果は半減される静希達が多く足を運ぶような山や森であれば種を成長させ根や茎、葉を広げることで一個の種の索敵範囲を強引に広げることもできるのだが、アスファルトや石の多い市街地ではその効果も半減されてしまうだろうあらかじめ研究所の周りの地図や写真を出してあったために、そこが市街地であるという事は把握していたから種の数はかなり用意しておいたが、その分蒔くという手間がかかるのは仕方のないことだろうフランスの街を観光しながら種まき、随分と奇妙な絵面だがそれはそれでいい経験になると考えていた定期的に連絡を取り合い、索敵にムラがないかを把握する中、そろそろ昼食時になるかと思われたとき静希の携帯に電話が入る相手はエドモンドからだった『もしもしシズキかい?ようやくフランスについたよ、今どこだい?予定が合えばお昼を一緒にと思ったんだけど』この前の様子とは打って変わり随分と和やかな声をしている、どうやら彼なりに折り合いはつけてきたようだった、少なくとも私怨を抱いて我を忘れているという事はなさそうだ「今は・・・どこらへんだここ・・・?面倒だからGPSの座標を送る、そっちで確認してくれ」明利の携帯を借りてエドに現在位置の座標を送信すると、エドがなるほどと言いながらどうするか考えている様だった『そのあたりにいるってことは、すでにいろいろ仕込みをしているところみたいだね、オーケー、今から迎えに行こう、この辺りでおいしい店を知ってるんだ』「そりゃいい、それじゃ一度こっちに他の奴も集めておくよ、明利、一度休憩だ、俺たちのいるところに陽太と鏡花を呼び出してくれ、通信要員を撒くのも一緒にな、できなきゃなんかいいわけよろしくって言っておいてくれ」「うん、わかった、伝えておくね」明利のナビがあれば土地勘のない場所でもかなり早く移動することが可能だ、複雑な地形を移動しながらこちらに向かえば一緒にいる通信役を撒くこともできるだろうそれに仮に撒くことができなかったとしても鏡花ならうまい言い訳をすることができると確信していた『そう言えばシズキのチームメイトも一緒なんだろう?こりゃ店を予約しておいた方がいいかもしれないね』「あー・・・確かに人数多くなるからな・・・エドにアイナ、レイシャ、俺に明利、陽太と鏡花、七人か」確かに数えてみれば相当な人数だ、昼時の店としてはいきなり七人の人間を入れるというのは地味に迷惑だろうどうやらアイナかレイシャに店に予約をとるように指示を出しているようだ、手際の良さは相変わらずというべきか「そうだエド、俺らの泊まってるホテルなんだけど、もう場所はわかってるのか?」『もちろん、すでに割り出してあるよ、夜にでもまた遊びに行くさ、一応手土産も持ってね』手土産というのがいったい何なのかはわからないが、エドは随分と楽しそうだそれじゃあ待ってるぞと言って通話を切り、とりあえず今の場所から動かずに鏡花たちとエドを待っていると、先にやってきたのは鏡花と陽太だったその近くに通信役の軍人がいないところを見ると撒いたか説得でもしたようだ「お疲れ、今からお昼?」「あぁ、丁度VIPも到着したしな、ついでにってことで」VIPというには随分と親しい仲になってしまったが、その待遇には間違いはないだろう仮にも悪魔の契約者、そして運輸会社の御曹司だ、そんな相手と会うのがただの学生であるというのが何とも妙な話ではある「通信役の人は?」「お昼に行くから休憩してていいですよって言ったら帰って行ったわ、途中まで尾行してたみたいだけど撒いてきた」休憩していていいから離れるという子供の使い程度の仕事をするような人間ではなかったのだろう、しっかりと鏡花たちの後について来たようだったが、明利のナビゲートがある状態ではさすがに鏡花たちに分があったのだろう、すでに引き離され完全に見失った後のようだった、こういう時索敵網を敷く意味を実感させられるしばらく談笑して待っていると、静希達の近くに大型のワゴン車が停車するそして窓が開きその中からサングラスをかけたエドが顔をのぞかせた「やぁシズキ、ボンジュール?」「はは、フランスっぽいけど、発音が微妙だぞ?」そう言ってくれるなよと言いながらエドは車の鍵を開けて静希達を中に招き入れるその中にはいつものようにアイナとレイシャが待っていた、そして後部座席にはいくつかの道具が乱雑に置かれているのがわかる「皆様、お久しぶりです」「数日間ではありますが、よろしくお願いいたします」「二人とも久しぶり、また背が伸びたか?」アイナとレイシャの頭を撫でながら久しぶりの再会を喜びながら静希も席に座る全員が乗ったことを確認するとエドはゆっくりと車を走らせ始める静希とエドの事情を知るものがこの場にいたら、悪魔の契約者が二人もいるという現状に慌てるところだろうが、生憎とここにいるのは二人のことをそれぞれ知っている人間ばかり、静希に至っては単に友人と会うかのような気安さで接していた「そう言えば君たちはフランスは初めてだったっけ、どうだいフランスは」「なんていうか、イギリスとは違った雰囲気の所だな、街というか人というか、空気が違う気がするよ」「あと飯がイギリスと違う味付けがしますね、あれも結構うまかったっす」陽太はすでにエドへの警戒を解いているのか気兼ねなく話しかけている様だったが、鏡花はまだ少しだけ気後れしている様だった当然かもしれない、ほとんど面識のない外人と話せという方が無茶だ、静希は何度も面識があるし明利も同じようなものだろう、陽太に常識的な考えをしろという方が無理なのはわかっているが、自分だけ話をしないというのも妙な感じだった「あの、エドモンドさんは悪魔の契約者なんですよね?」「ん?あぁそう言えば君たちはまだ僕のバディにあったことがなかったね、今日時間があれば紹介するよ、さすがに車の中で出すと狭くなるからね」紹介はされたが実際に悪魔を見ていない鏡花からすれば未だに半信半疑だったのだろう、それもそのはず、エドモンドはパッと見ただの好青年だ、いや歳を考えれば好中年というべきだろうか、どちらにせよその性格と表情や口調から悪魔の契約者という事実を結び付けにくいのだ今まで悪魔の契約者という存在の印象はすべて静希一人で構築していたために、どこか頭のネジが飛んでいてなおかつ残忍な人間がなるものとばかり思っていたのだなのでこんないい人そうな男性が悪魔の契約者であると言われても違和感しかなかったのである「ヴァラファールさんは凄くモフモフしてるんだよ、鏡花ちゃんも触らせてもらうといいよ」「・・・え?モフモフしてるの?」てっきり悪魔というとメフィのような人型かと思っていただけに少し意外だったのか、丸い毛玉のような姿を想像してしまっていた実際は獅子のような姿をした渋い声を持った悪魔なのだが、そこまで想像しろというのは酷な話だろう「ちなみにさ、アイナちゃんとレイシャちゃんはいつもエドモンドさんと一緒にいるのよね?そのヴァラ・・・ファール?さんともよく会うの?」「はい、ヴァル卿は私達とよく遊んでくださいます」「とてもお優しい方です、とても良い声をしておられます」エドと行動を共にすることが多い二人に話を聞くと、とてもいい人(?)のような気がする、静希の家に住み着いているニート悪魔とはずいぶんと印象が違うように思えた鏡花の中でヴァラファールのイメージが毛玉で紳士な羊のような存在になってきたが、実際にその姿を見た時どんな反応をするか楽しみである草食系とは真反対の外見をしているだけにどんな印象を受けるか「なんだか同じ悪魔でも随分と印象が違うわね・・・静希のとこのとは大違い」「あはは、メフィさんは気まぐれだからね、それにメフィさんは女性っぽいし、ヴァラファールさんは男性っぽいから」へぇそうなんだと実際に会ったことのある明利の証言にさらに鏡花の中でイメージが膨らんでいく、徐々にシルクハットに杖、そして髭を生やした毛玉がいい声で話しかけてくるのが浮かんでくる始末だ、本人にその想像を見せた時どんなリアクションをするかも気になるところである「そうそう、君たちは何かアレルギーとかはあるかい?あれば店にあらかじめ言っておくけど」「いやないよ、大体何でも食べられる、というかエド、どこに向かってるんだ?もう結構移動したけど」静希の言葉にエドはまぁ任せてよと笑っている、それなりに自信があるのだろうか楽しそうにハンドルを操っている思えばエドが運転する乗り物に乗るのも久しぶりだなと思いながらその運転に身を任せるあの時はバイクだったが、車の運転もうまいものだ、安心して任せていられる運転で静希のそれとはまた違う感覚がある「その場所ってたくさん食えますか?俺腹減っちゃって」「ははは、了解、たらふく食えるように言っておくよ、もう少しでつくから我慢していてくれ」遠慮と言うものをしない陽太の言葉にも見事な大人の対応をするエドを見てやはりこの人は悪魔の契約者ではないのではないかと思ってしまう鏡花、身近にいるそれとは性格が違いすぎるためとはいえ、少々疑いすぎかもしれないと鏡花は自らを戒めたエドが連れて来てくれたのは大通りにある少し大きめの店だったフランスのことをあまり知らず、フランス語も読めない静希達は知る由もないが、時間帯によっては予約しなければ入れないほどに有名な店らしいそんな店を簡単に予約するあたりエドを始めアイナやレイシャはある意味運がいいのだろうか、それとも何か細工をしたのか、そんなことは全く気にすることなくエドに引き連れられ静希達はその店の中に入っていく少し大きめのテーブルに全員で座ると、メニューを開いて何にしようかと悩み始めた「そう言えば君たちはフランス語が読めないんだったっけ?」「あぁ、話すのは問題ないんだけど、読み書きはからきしだ」「ははは、なら注文の時は任せてくれ、フランスには何度か来ているからもう慣れてしまったよ」さすがに多種多様な国に足を運んでいるだけあって最低限の言語は修得しているようだ、英語や日本語だけではなく、もしかしたらもっと多種多様な言語を話すことができるのかもしれないやはりエドは優秀だなと実感しながら静希はエドにメニューを見せながら注文する料理を告げていく「ところで、君がキョウカちゃんで合っていたかな?」「え・・・は、はいそうですけど・・・」不意に呼ばれたことで鏡花は身構えてしまうが、エドは柔和な表情を浮かべそうかそうかと何度かうなずいている「いやぁ、シズキから話を聞いていてね、何でも君もバレンタインに告白して成功したそうじゃないか、それで他人のような気がしなくてね」その言葉に鏡花は吹き出し、すぐに静希を睨むしゃべったな鏡花は目でそんなことを訴えた後、小さくため息をついてエドの方を見る「えっと・・・君もって事はエドモンドさんもバレンタインに?」「あぁ、いい人に巡り合えてね、毎日が楽しい限りさ」バレンタインに告白して成功した人が二人、確かに奇妙な縁かもしれない、エドは笑っているが鏡花としては自分の話をいつの間にかされていて気恥ずかしい限りである「ミスターイガラシからも何か言ってください、ボスは最近浮かれっぱなしです、もううるさくてうるさくて」「この前ヴァル卿も呆れていました、もう少し落ち着いた態度をするように言ってください」アイナとレイシャからの苦言にエドは苦笑いしているが、どうやらこの態度を変えるわけではないようだった幼い能力者二人に注意される辺りエドらしいと言えるが、この二人が年齢の割にしっかりしすぎている気がするいや、エドが少し頼りないからそうならざるを得なかったのか、どちらにしろエドは将来尻に敷かれそうである「まぁ幸せなのはいいけど、周りの目に気を付けたほうがいいと思うぞ?見るに堪えないかもしれないしな」「あんたがそれを言う?普段からしていちゃついてるくせに」鏡花の指摘に静希は苦笑し、明利は恥ずかしそうにうつむく、人のことを言えるほど静希も自重しているわけではない今までそれを見てきた鏡花からすれば静希達のいちゃつきっぷりは砂糖を吐くのではないかと思えるほどだ「えー・・・でも鏡花だって最近二人きりの時は俺とむぐ」「はい陽太余計なことは言わないの」陽太の発言を無理やり手で止めるが、そこから先何を言おうとしたのかその場にいる全員が察したのか、鏡花と陽太の方を見ながらニヤニヤしている祝福されるのは悪くないのだが、こういう反応をされると恥ずかしくて顔から火が出そうであるだがそんな中でアイナとレイシャはまたかという表情をしているじっとりとした目でため息をつくあたり、普段からエドはこういう空気を垂れ流しているのかもしれない、幼い少女二人にしてみれば飽きもせずよくやるものだと言いたくなるのも納得できる「まぁめでたいことに変わりはない、ここは僕のおごりだ、好きなだけ食べてくれ」「まじっすか!よっしゃ!」「少しは遠慮しなさいよ?すいません、御馳走になります」陽太と鏡花は正反対の反応をしているのに対し、静希と明利は感謝しながらも追加で何を頼もうかと悩んでいるそしてエドやアイナとレイシャも何を注文しようかとさらに悩む中、エドが注文した料理がテーブルに運ばれてくる「よし、それじゃあいただこうか、今は堅苦しい話や面倒な話は無しの方向で行こう」どうやらエドはこの食事を懇親会のようなものにしたいらしい、静希と違い他のチームメイトとの交流が少なかったため、ここで自分がどんな人物であるか、そして鏡花たちがどんな人物であるかを確認したかったようだ社会で働く上で人を扱うことに慣れてきたために、こういう社交的な面を持ち合わせてきたという事だろう静希としてもエドのことを信用してもらうためにこういう場を持ってもらうのは非常にありがたかった誤字報告が35件たまったので八回分投稿はい、八回分です・・・八回分です・・・!さすがにちょっとへこんでますこれからもお楽しみいただければ幸いです

「へぇ・・・じゃあ会社を一つ作ったんすか?すごいっすね」「すごいと言っても父の会社の下部組織としての扱いだけどね、まだまだ人手不足さ、でもこれからもっと大きくしていくつもりだよ」雑談を踏まえながらエドはいろんな話をしてくれた、それこそ今まで行ったことのある外国の事や自分の仕事のことまで様々だそして話し上手なだけではなく聞くのも上手い、要所要所で話を掘り下げられるような質問をするため会話が途切れることがなかった食事中に会話というのは本来マナーに反するかもしれないが、こういう場なら多少はマナーは無視してもいいだろう「この二人はその始まりの第一歩さ、立派なレディに育て上げて見せる、苦労はするだろうけど優秀な子たちだ、きっとすぐさ」エドに褒められたことでアイナとレイシャは誇らしそうに胸を張る、彼女たちとしても自分が早く頼られたいと思っているのだろう、恐らく日々の努力を怠らずエドのために成長しているであろうことがうかがえるでなければ違う言語を覚えることも、すぐに違う何かをできるようになるはずがないエドはもともと優秀であることをほのめかしたが、彼女たちが優秀なのは雇い主であり保護者がエドだからだ、エドが優しく接してくれるから、彼女たちはそれに報いたいと全力で努力するのだ全く計算に入れていないことだろうが、こういうところはさすがというほかない計算でも打算でもない、エドは天然でそれができるのだ計算や打算だらけの静希とは真逆と言ってもいい性格に鏡花は驚きながらも感心を隠せなかった、エドがやろうとしていることの難しさを理解したからであるかつて静希が感じたことをそのまま鏡花も感じていた、困難な道、茨の道、多くの者が目指したかもしれないがその結果全て失敗に終わっているだろうその行程目の前にいるエドなら、なぜかできてしまうのではないかと思えてしまうのだ不思議な人だ、鏡花は素直にそう思った静希のような強い意志や指揮能力があるようにも見えない、パッと見ただの優しい近所のお兄さんのような風体をしている、なのにこの人についていけばきっと大丈夫、そう思わせる何かが、エドにはあったこういうのをカリスマというのだろうか、人を惹きつける才能、努力ではどうにもならない天性のもの静希のようにその行動や思考から結果的に人々を惹きつけるのではない、会話や表情、そして自らが信じたことに真摯に打ち込むその姿勢に惹かれるのだ、言わば行動する前に人を惹きつける静希のそれとは真逆だなと鏡花は薄く笑うもしかしたら、こういう性格だからこそ、彼は悪魔の契約者になれたのかもしれないと、そう思った「こんなちっこいのがねぇ・・・まぁ明利もおんなじくらいか」「も、もうちょっと高いよ!私お姉さんだから!」そう言って必死に弁解しようとしている明利だが、身長的な意味でその差はどんどん埋まってきている試しに三人を並べてみたところ、差はあと十センチあるかないかというところだろう、もはや追い抜かれるのは秒読み段階というところだろうかその事実に打ちひしがれたのか、明利はしょぼんとしながら食事を続ける、そんな自称「お姉さん」とは対照的にアイナとレイシャは嬉しそうにしながら食事を続ける「ボス、ミスミキハラを抜かせば私たちも大人の仲間入りでしょうか?」「きっとあと一年・・・いえ、あと半年もあれば抜かせるのではないかと!」「あはは・・・その日を楽しみにしているよ・・・ちょっと申し訳ない気もするけど」あと半年もあればその言葉に追い打ちをかけられたのか明利は机に突っ伏してしまう十六年かけた成長が、自分よりいくつも年下の女の子に抜かされるこの屈辱は、きっと明利にしかわからないだろうそろそろ東雲姉妹にも抜かされるかもしれないという事でやたら危機感を持っていたようだったが、さらに対抗馬が出てきたことで明利の警戒心はマックスになっている様だったカルシウムをはじめとする、背を伸ばすのに必要な栄養は普段から摂取しているのに一向に背は伸びず、周りの目線だけが高くなっていく「でも立派なレディになるなら、体だけじゃなく心も成長しないとね、体だけ大きくても大人になれるわけじゃないんだよ?」「むぅ・・・そうなのでしょうか」「それならば成長すればよいのです、それだけのことです」成長すればいいなどと軽く言ってのけているが、それがなかなか難しいという事を幼い二人は理解しているのだろうか体は栄養と運動によって育まれるが、心は経験によってしか育まれない彼女たちが言っているのはつまり、これからたくさん苦労していくのだと言っているようなものだ早く一人前に、早く大人にいかにも子供らしい考えである、だがエドはそれをほほえましく眺め、その考えを尊重するようだったもはや彼女たちの父親のようである手間暇かけて世話をしたことで父性に目覚めたのか、それとももともとこういう性格だったのか、穏やかで厳しくも優しい目をしている鏡花はこの時ようやく理解した、悪魔の契約者はどこか変な人がなるのだとそして静希の方を見て確信を深める、間違いないかもしれないとエドとの昼食もそこそこに、静希達は食事を終え一度エドと別れることになったエドはエドでいろいろ準備が必要らしく、夜に静希達の部屋に向かうことを約束しその場から去って行った「なんというか不思議な人だったわね」「そうだな、まぁあれがエドだ、よくわかっただろ?」昼食をともにし、いろいろな話をしたおかげで鏡花も陽太もエドの人となりを知ることができた、少なくとも信用に値する人物であるという事は十分に理解できた「いい人だってのは十分にな・・・まぁ明利は一人だけ深手を負ったみたいだけど・・・」陽太の言葉に静希は自分のそばにいる明利に視線を向けると、先程のアイナとレイシャとの背比べが地味にショックだったのか、いまだに項垂れている何歳も年下の少女たちに抜かされそうなのがかなりの精神的なダメージにつながったのだろう、自分の背の小ささを延々と嘆いている様だった身長ばかりは努力だけで決まるものではない、はっきり言えば努力などではどうにもならない部類だ多少の違いは出るかもしれないが、明利は人並み以上の努力をしているにもかかわらず全く伸びない、それに比べあまり努力をしていない静希や陽太はぐんぐんと背が伸びる身長の女神はよほど明利が嫌いらしい、小学生の頃から一センチもその背を伸ばしてやらないのだから「私だって身長が欲しいのに・・・もうちょっと・・・せめてあと五センチ」五センチもあれば明利の身長も百五十を超えていたのだろうが、その願いは心底求めた者に限って叶わないようになっているらしいたった五センチ、手のひらよりも小さなその五センチが明利がどんなに努力しても手に入れられなかったものでもあるのだこうなってくると明利が可哀想でならないのか、鏡花はどうしたものかと困ってしまう「明利、なら私が厚底ブーツとか作ってあげるわよ?」「それじゃ意味ないの・・・ちゃんと背が伸びないと意味ないの・・・」靴に細工をして身長を疑似的に伸ばそうとしたのだが、明利が欲しいのは純粋な身長の高さだ能力を使っても栄養を整えても全く伸びることがないその身長、彼女が欲するものはもはやどうあがいても手に入らないような気がしてならなかった「こりゃ重症だな・・・身長コンプレックスここに極まれり」「シャレになってないわよ、明利、ほら元気出して」何とか元気づけようとするのだが、右から左へと聞き流されているような気がしてならない静希が頭を撫でても声をかけても反応がないところを見るとかなりショックだったのだろう同年代に身長を抜かれるというのは慣れっこだが、圧倒的な年下に身長を抜かれるという経験は少なかったためにこれから先やってくるだろう彼女たちの成長を想像して絶望に打ちひしがれているようだったくだらないと思われるかもしれないが明利にとっては重要事項だ、長年願い続けた成長を、長年努力し続けた成長を、自分よりはるかに年下の女の子たちが手に入れようとしているのだから恨む気持ちなどはありはしないが、どうしても羨んでしまうどうして自分はと思ってしまうのだ、自分の身長が伸びなかったが故に「ちょっと静希何とかしなさいよ、あんたの彼女でしょ?」「そうはいってもなぁ・・・この状態になると長いぞ?明利、ほら聞こえるか?」静希が少ししゃがんで目線を合わせようとするが、明利はうつむいたままだその顔に触れても、髪を撫でても何の反応もない恐らくは自分のコンプレックスが一気に押し寄せているのだろう、明利の抱えるコンプレックスの量を考えると相当の自己嫌悪が予想される「もう・・・しょうがないわね」そう言いながら鏡花は後ろから明利の顔を掴む「明利、人間身長だけじゃないわよ、それにしっかりあんたのことを見てくれる人がいるでしょ?」そう言いながら鏡花は明利の顔を持ち上げて静希の方を向かせる、心配そうに明利の様子をうかがっている静希を見て、明利はわずかに顔色を変えた「あんたは確かに小さいけど、それでもあんたを大事にしてくれる人がいるんだから、そうやって自分を嫌いになっていくのはやめなさい、それはあんたのことを好きでいてくれる人に失礼よ?」自分を好きでいてくれる人がいるのだから、自分自身が、自分のことを嫌いになってはいけない大事な人がこんな自分を好きでいてくれる、鏡花はそのことを明利に伝えたかったかつて陽太が自分に教えてくれたことを、大嫌いな自分を少しだけ好きになれるそんなことを明利は落ち込むのをやめたのか、小さく息をついてうんと頷いた「さすが関東圏内で最高にできる女鏡花姐さん、班員のフォローもバッチシっすね、まじぱねえっす」「はいはい、元気になったのならさっさと作業再開するわよ?」妙に雑な褒め言葉だが、陽太に褒められてまんざらでもないのか鏡花は上機嫌になりながら陽太を引き連れて再び作業へと戻っていく案外扱いやすい奴だったのかもしれないと思いながら静希と明利もまた街に種を蒔く作業に戻ることにした静希達が再び作業を始めてどれくらい経過しただろうか、すでに日は傾き始めフランスの街はオレンジ色に染まり始めていた進行率はおよそ七割と言ったところだろうか、一日中歩き回ってこれである、とはいえ明日、実験前日には間に合いそうな速度だ大野や小岩にも今日は終了するという事を連絡し、とりあえず静希達はホテルに戻ることにしたまだ二月ではあるが一日中歩いていたという事もあってそれなりに疲れ、汗もかいているためそれぞれ部屋でシャワーを浴びて体をきれいにすることにし、その後城島に報告へ向かった「という事で、明日には索敵網は完成しそうです、召喚当日には間に合うかと」いつも通り班を代表して鏡花がそのように報告すると城島は腕を組んだ状態で何度かうなずく「ふむ・・・やはり慣れた山や森と違い時間がかかるようだな、幹原の能力の性質上仕方がないと言えるが・・・」明利の能力は生き物に対する同調だ、生き物にあふれている山や森ならばともかく、人工物であふれた町などはどうしても索敵網の構築速度は落ちてしまう索敵をするのに事前の準備が必要なのが明利の能力の欠点だ、その分広範囲をカバーできるとはいえその時間的猶予があるときの方が珍しいのである「だが実験に間に合うという点では十分に良い知らせだ、これで少しは楽になるか?」「そうだといいんですが・・・あと今日エドモンドさんに会いました、これからここに来るらしいです」その言葉に城島は目を細める、いくら静希と交流があるとはいえ、悪魔の契約者を軽々しく生徒と接触させていいものか悩んでいるのだろうもうすでに昼食を共にしてしまってはいるのだが、城島の悩みもあながち間違いではないだけになんともいい難かった「確か、今回の作戦においては伏兵の役割を担っているのだったか?」「えぇ、向こうにも伝えていないことですのでほとんど情報は入っていないかと、もしかしたらもう一人悪魔の契約者が接近してるくらいのことは気づいてるかもしれませんが」鏡花から説明を引き継いだ静希がそう告げると、城島はふむと呟きながら口元に手を当てた悪魔の契約者が召喚に際し三人も集まるこのことが知られればそれだけで警戒のレベルが跳ね上がることは間違いないだがその実、三人のうちの二人は結託しているのだから妙な話だ「ことが起これば参加・・・か・・・これ程頼りになる伏兵もいないだろうな」「全くです、戦力としては十分すぎる」伏兵とは本来、数で劣っている軍勢が行う奇襲に分類される策の一つである目に見えていなかったはずの敵が唐突に現れることで、仮にそれが少数であろうと士気を低下させ、混乱を呼び起こす、それが伏兵の役割であり強みだ静希が用意した戦力は、伏兵というにはあまりにも強力過ぎる、それは単身の能力のみで事をすべて解決できてしまうのではないかというほどであるそして強力過ぎるが故に味方にも混乱を呼びかねないという欠点がある、そこは静希が上手く説明するしかないだろうが、あらかじめ用意できるものとしては最高の状況がそろっていると言っていい索敵網は直に完成し、包囲網も作ることができる、戦力だって十分以上だ万が一負ける要素があるとすれば、相手も複数人で挑んできた場合だろう、それも悪魔と同列の存在を引き連れてきた場合は危険だカロラインの立場上、第三者と組んで行動するという事は考えにくいたとえあったとしても一緒に逃亡したと思われる彼女の弟くらいのものだ戦いが始まる前にすでに勝敗を決する、静希が目標とすることでもある不確定要素の多い悪魔との戦闘でどこまで事前の準備で有利にできるかが肝だが、今のところ順調に事は進んでいるように思える、少し順調すぎるのが逆に怖いが「とはいえ相手は悪魔の契約者だ、油断するなよ?最悪足元をすくわれるだけでは済まんぞ」「わかっています、痛い目に遭うのはごめんですから」足元がすくわれるなどという軽いものでは済まされない、もし下手を踏んだらその時は静希の足ごと地面を抉りぬかれるくらいの被害が出るだろうそしてその被害は自分だけでは済まされない、恐らく他の部隊の人間にも波及していく、自分が担っているのは、所謂エースにも似たポジションだ、勝敗を決するために一番重要な駒といってもいい普段は表に出ないだけに、そんなに重要な役割を任されたことなどなかったのだが、状況が状況だ、甘んじて受け入れるしかないだろう「幹原、お前の方からは何かあるか?索敵を敷いているうえで何か気づいたことは」「え・・・?えっと・・・今のところは特には・・・人の流れを確認するので精いっぱいです」街に置いて人の流れというのは必ず存在する、それは駅や店の配置によって変わり街それぞれに特有の人の流れが構築されるのだ明利はその把握に努め、日常における人の流れを把握することで緊急時にすぐに反応できるようにしているのださすがに長いこと索敵をやってきた実績は伊達ではないという事だろう、城島もその報告に満足している様だった「とりあえず今日できることはやりつくしたようだな・・・あとは件のエドモンドがやってくるのを待つばかりか」「ひょっとして、待たせちゃったかな?」「いやそうでもないよ、昼ぶりだな、ようこそ」城島への報告を終えた後、静希達は一度自分たちの部屋へと戻ったそれから数十分後エドはたくさんの荷物と共にアイナとレイシャを連れてやってきたどうやってフロントを通り抜けたのかは知らないが、さも当然のように部屋の前にやってきたエドを見て静希はたくましくなったものだと感心してしまっていた身近に工作活動ができる人材ができたというのもあるだろうが、ある種の風格のようなものも漂わせている教え子であり弟子であるアイナとレイシャが『ボス』と呼ぶにふさわしい人物になりつつある気がして少し微笑ましかった部屋にエドを招き入れると、そこにはすでに静希をはじめとする一班の人間と大野と小岩、そして城島の姿もあるそして既に室内には静希の連れる人外たちも姿を現している元々少し広めの部屋とはいえあまりにも人数が多く、少し手狭な印象を受けてしまうここに集まったのは、いわば明日以降の動きについての最後の確認のために集まった実動部隊だ一見すれば、錚々たるメンバーといえるだろう「勢ぞろいって感じだね、それじゃあ挨拶といこう」そう言いながらエドモンドはまるで紳士のように礼をする、それと同時にエドの少し後ろについていたアイナとレイシャも礼儀正しくお辞儀をして見せた「初見の方もいるようだからあえて初めましてといわせてもらうよ、僕は悪魔の契約者エドモンド・パークス、後ろの二人はアイナとレイシャ、僕の両腕さ、そしてもう一人」エドが指を鳴らすとその体の中からゆっくりと獅子の体と黒く長い尾、そして異形の四足をもつ悪魔、ヴァラファールが姿を現した「一部の者を除き、初めまして、ヴァラファールだ・・・こいつの連れをやっている」「あら、お久しぶりね・・・相変わらずしかめっ面だこと」その場に現れた悪魔に反応したのか、メフィはふわふわとヴァラファールの方に飛翔していき嬉しそうに、そしてからかうような笑みを浮かべるそんなメフィを見て鼻を鳴らしながらヴァラファールはのそりとベッドの上に陣取り体を丸めてしまう頭の中でゆるキャラのようなイメージを浮かべていた鏡花はヴァラファールの姿に若干驚いていた確かに毛はもふもふしているかもしれないが、自分が想像しているのとは全く違って強面だ、アイナとレイシャの言う通り良い声をしているが想像とかけ離れすぎている今にして思えば仮にも悪魔なのだ、自分が想像していたような間抜けな姿をしているはずがないなと鏡花は自らを戒めた「あ、あの・・・ヴァラファールさん、お久しぶりです・・・あの・・・私の事、覚えてます・・・か・・・?」その強面な悪魔に近寄っていく小さな少女明利、一見すれば猛獣にウサギが近寄っていくような図になり、大野と小岩、そして初めてヴァラファールを見た城島と鏡花は大丈夫なのだろうかと僅かに反応しただが彼らが心配するようなことにはならなかった「あぁ覚えているとも、シズキ・イガラシの所にいた娘だな・・・名を確か・・・メーリといったか」「はい、そうです!お元気そうで何よりです!」まさか覚えているとは思わなかったのか、明利は嬉しそうであるこのヴァラファールという悪魔、見た目に反して非常に紳士だ、口調や態度は威厳ある武士を彷彿とさせるが、実際は素直になれない老人のような性格をしている「そちらもな・・・そうだ、確か彼奴と恋仲になったそうだな」「は、はい・・・そうです・・・」「ならば互いにしっかりと手綱を握っておくことだ、彼奴はいつの間にかどこかに飛んで行ってしまうような男のようだからな」明利がふふ、そうですねと笑うと、ヴァラファールもその笑みにつられたのか薄く笑って見せる普段邪薙のような獣顔を見慣れている人間でなければその微妙な表情の変化はわからなかっただろう、それほど小さく、短い変化だったのだ「こちらも自己紹介と行こうか、私は城島美紀、五十嵐を始めこのバカどもの引率をやっている、初めましてエドモンド・パークス、その節ではうちのバカが世話になった」「いやいや、むしろこちらが世話になったほうだよ・・・そうか、貴女がミスジョウシマ、たまにシズキが口に出したことがあったよ」その言葉に城島の視線が一瞬静希に移り、ほほうと何やら含み笑いをするが、この場でその話は置いておくことにした話に聞いていた悪魔の契約者、どのような人物であるかこの場で判断しようとしているのか城島はゆっくりとその視線をエドの全身にむけ、ゆっくりとその顔を確認するそしてそのことに気付いたのか、エドは小さく笑って見せる「貴女はシズキが言っていた通りの人物のようだね、気難しいながらも、実は心配性な優しい女性、シズキが信頼するのも頷ける」「・・・!そこまで評価が高いと少し疑ってしまうな・・・」それが他人からの言葉だったからか、それとも静希がそこまで城島を高く評価していたことを疑っているのか、城島は顔をそむけながら僅かに赤くなっている今までまっすぐと評価されることがなかったためか、予想外の高評価にどう反応したらいいのか困ってしまっている様だった実際静希は城島を信頼している、彼女は信頼に足る教師だ生徒のことを心配し、厳しく接しながらもよい方向へと進めることができるように助言や手助けを惜しまない彼女がいたことでどれだけ助けられたことか、静希を始め、一班の人間は城島にとても感謝していたそれを直接本人に告げたことはなかったが、前にエドと世間話をした時のことを覚えていたのだろう、静希は少しばつが悪くなりながら頬を掻いていた「そちらのお二人・・・片方はイギリスの時以来だね、お久しぶり」「えぇ、あの時は敵同士でしたけどね」「味方の今は心強い限りですよ」大野と小岩の方を見ながらエドは爽やかに笑って見せる大野はエドが犯人にされかけた時から会っていなかったが、小岩は一度静希が強引にイギリスに呼ばれたときに会っている、とはいえだいぶ久しぶりな再会だったそんなやり取りをしている後では明利がヴァラファールを撫で、鏡花も恐る恐るそれに続こうとしていた、何とも微笑ましい光景である「それじゃ挨拶も済んだところで、本題に入ろうか、内容は今後の動き方についてだ」静希が場を取り仕切り、ざわついていた空気を一気に引き締める、その場にいた人間も人外も全員が静希の方に視線を向ける人間十人、悪魔二人、神格一人、霊装一人、総勢十四人、これが今動ける最大戦力悪魔が二人に神格が一人いる時点で戦力過多かもしれないが、それでも確実なことは言えないのが現実である「今のところ明利の索敵網の完成率は七割程度、明日を使って索敵を万全にする予定、んで当日の話に移るけど、目標の目的を明らかにしやすいように今日のうちに配置を決めておく、実際に索敵内で行動することになるエドはよく聞いておいてくれ」「了解だ、任せておいてくれ」自信満々にそう言っていたエドだが、静希が言う内容を聞いていくうちに頭で整理しきれなくなってきたのか、とうとうメモを取り始める始末だったそんな姿を後ろからアイナとレイシャが申し訳なさそうに眺めているのが非常に印象的だったそれもそのはずだろう、静希が伝える当日の配置や行動は、今のところ考えられるすべての可能性を考慮した物で、その分岐が果てしなく多いのだ「とまぁ、以上が大まかな流れだけど、これまでのところで何か質問は?」「えっとすまない、ちょっとまとめさせてくれ・・・」「・・・こっちも、ちょっと待っててくれ」こういう流れに慣れていないのか、エドだけではなく大野までメモを取り始めている始末元々頭脳派である鏡花や思考活動になれている城島、小岩は慌てる必要もなくそれら全てを頭に入れたようだった一方頭脳労働はあまり得意ではない陽太と、索敵に集中するべきである明利は最初から考えることはせず、自分のできることに集中するために必要なところだけを覚えているようだった「ミスターイガラシ、私達はボスについていればよいのでしょうか?」「あぁ、そのほうがお前達も安心できるだろ、戦闘になった時は無理に加わるなよ?攪乱のために動いてもらう行動はわかるな?」「はい、先ほど述べた迷子の振りですね、お任せください」覚えが早くて何よりである、話についていけなかったエドに比べ、アイナとレイシャは頭脳労働が得意なようだ、どうやらエドは作戦を考えたり自分の頭の中でそれをシミュレートするのは苦手なようだった最初にあった時もぬけた作戦を立てていたなと思い出しながら静希は苦笑する「五十嵐君、私達は交通規制の範囲外から動向をチェックすればいいのね?」「えぇ、もし危険になった様なら補助役として突入してもらうかもしれません、ないようにするつもりですけど」静希の考えの中で大野と小岩が登場するような事態はほとんどないと言ってもいい、戦闘を行うのが静希がメインとなるならそこにただの能力者が一人二人加わっただけでは焼け石に水だだが静希が気を許せる相手となれば多少は状況を変えられるかもしれないのは確かだ、そう言う意味で大野と小岩は必須である「私もこいつらと外側で待機か・・・何とも歯がゆいな」「先生の場合は結構な場面で活躍してもらうかもしれません、その時はお願いします」一応初期配置においては城島も交通規制の外側だ、だが大野と小岩に比べると城島の行動可能状況は圧倒的に多い最初から戦力の数に数えられているというのもあるが、彼女の能力はかなり応用が利く、静希としてもその優位性を使わない手はない「それで私たちは研究所の中で召喚されるものへの対応・・・か・・・なんだか物々しすぎて嫌になるわね」「そう言うなよ、お前らには邪薙を付ける、邪薙、こいつらの安全は任せたぞ」「任されよう、守り神の力を存分に振おう」鏡花たちは召喚される悪魔に対して有効な対抗手段があるわけではない、可能なのはあくまで時間稼ぎである安全を任された邪薙だって確実に悪魔の攻撃を防ぐことができるというわけではない、メフィと同等の存在と遭遇してしまった場合、数発も攻撃を受ければその障壁は破壊されてしまうのだ鏡花たちならばその数発の隙に回避行動くらいはとることができるだろうが、油断が許されない状況になる可能性が高いのは確かである「えぇと・・・僕の場合はかなり前線に出る可能性が高いみたいだね・・・頼られるのは嬉しいけど・・・覚えきれるかな・・・」「まぁそこは頑張ってくれとしか言えないな・・・まぁお前にはしっかりした両腕に頼れる相棒がついてるんだ、問題ないだろ?」静希の言葉にヴァラファールは僅かに鼻を鳴らし尻尾を揺らす、そしてアイナとレイシャはやる気が上がったのかエドの両腕を掴んで誇らしげにしている「ボス、しっかりしてください」「ボス、私達がついていますよ」「あはは・・・頼もしい限りだよ」頼もしい両腕に囲まれながら笑うエドに、その場にいた全員がわずかに苦笑してしまった土曜日なので二回、そして誤字報告が15件分あるので合計五回分投稿です八回投稿したせいで五回分が大したこと無いように思える不思議、メンタルのレベルが少し上がったかもわかりませんねこれからもお楽しみいただければ幸いです

「そう言えばエド、昼に土産とかなんとか言ってたけど・・・どれのことだ?」静希はエドの持ってきた荷物をざっと見渡す、大きなトランクが結び付けられいくつものカバンを鈴なりにつけているその様は少々異様だ「あぁそう言えばすっかり忘れていたね、いくつかあるから好きなのを持って行ってくれて構わないよ」そう言って一つずつカバンから取り出していくのだが、その中身は物騒なものばかりだった銃に手榴弾に弾薬に刃物、それも多種多様、今回のことに関わるにあたりエドが用意した武装の限りだった「また随分と・・・」「すごい構図ね・・・」静希はその武器の数々に驚き、鏡花はそれらを用意したエドの評価を少し改めていた外国ならこのくらいは当たり前なのだろうかとも思えたが、さすがにそのレベルを越して余りある量の数の武器に、さすがに鏡花も引いてしまっている「・・・生徒の前で危険物を取り扱うのは少々いただけないな、こちらとしても立場があるのだが?」「あぁ、もちろん所有するための訓練を受けている人に限りさ、この中ではキョーカとヨータ以外の全員だろうけどね」この中で銃の訓練をしていないのは、エドの言う通り鏡花と陽太だけだ、明利はよく静希と射撃訓練を行っており、銃の所有許可証も有している大野と小岩は軍人であるが故にいうまでもなく、城島もかつて軍の特殊部隊にいたという事で何の問題もない「とりあえずこれとこれと・・・あとこれももらってくぞ」「どうぞどうぞ、用意した甲斐があるってものだよ」静希がホイホイと武器の類を選別しているのを眺めながら、陽太は何かを考えている様だった一体何を考えているのかはわからないが、とりあえず明利も用意された武器を眺めてみることにするこの中で彼女が使えそうなのは拳銃か、地面に置いて撃つタイプの狙撃銃くらいのものだ、ないよりはましだろうと明利は懐にしまっておけるような単発の小型の拳銃を手に取った「明利・・・まさかそれ使うの?」「使わないに越したことはないけど・・・一応の備えとして」この中で銃の手ほどきを受けていない鏡花は、明利が銃を使うという事に少々抵抗があった今まで銃の訓練をしていたというのは知っているし、夏休みには時折その姿を見ていただが訓練と実戦で使うことはまた意味が違うのだ、鏡花だけではなくそれは明利も十分理解している前回の実習、あの奇形種であふれた動物園の中で明利は一度拳銃を持った、静希から借りた拳銃、それを握って索敵を行ったときその意味をわずかながら理解したそして今度はそれを自ら行おうとしている身を守るためなのだ、それも必要であることはわかってはいるが、鏡花は頭で理解できていても、納得することはできかねていた「・・・こんなものに触るのは久しぶりだな・・・」そう言いながら城島はいくつかの銃に手慣れた手つきで触れていく、かつてそれらを使ったことがあるのだろうか一つ一つの動作に無駄がないように思えた「先生って銃も使ったんですか?大きな鈍器で戦うって聞いたんですけど」「・・・そのほうが得意ではあるが・・・まぁあって困るものでもないだろう」城島は一瞬小岩の方を睨んだ後でそう言いながらため息をつく事実、銃はあって困ることはない、いざという時は攻撃手段にもなるし、大きな銃であれば盾にだってできるしかも今回の城島達の行動からすると遠距離攻撃はあったほうがいいのだ、能力とは別のところで攻撃手段があるというのはそれだけで有利になれる点でもある逆に言えば、相手も同じように銃を所持していると考えていいだろう日本のように銃そのものが規制されているような国ならまだしも、ほとんどの外国では銃の取り扱いは平然と行われている、場所によってはホームセンターで銃を取り扱っているところもあるほどだ「鏡花はあれだ、手榴弾とかナイフとか持っとけって、トラップとかに使い放題だぞ」「相手が悪魔かもしれないのに通じるの?まぁ一応貰っておくけどさ・・・」鏡花の能力を駆使すれば自らの能力の効果範囲内であればトラップは作り放題であるそう考えた時鏡花の能力と現代兵器との相性は非常にいい、なにせ現代兵器のほとんどは引き金や留め金などでその動作を制御しているのだ、鏡花の能力を持ってすれば遠距離での動作制御も何の問題もない「喜んでくれているみたいで何よりだよ、用意するのはそれなりに骨が折れたけどね」「こういうの一体どこから仕入れてくるんだか・・・まぁ助かってるからいいんだけどさ」エドはいろんな国に足を運び、恐らくいろんな国でいろんな人と関わりコネを形成していっているのだろう、そう言う意味ではこの中で一番の重要人物といえるかもしれない社会人として働くだけではなく悪魔の契約者としての土台も形成しているあたりさすがと言わざるを得ない、少々抜けているところもあるがそのくらいはご愛嬌だろう「あぁそうそう、武器だけじゃなくて普通のお土産もあるんだよ、お菓子とか食べ物とか」「・・・そっちを先に出した方が平和的に見えたかもな・・・いったいどこのだ?」「さぁ?いろんなところに行ったからね、いちいち覚えていないさ」爽やかにそう笑うエドだが、後ろのアイナとレイシャは額に手を当ててしまっているこの二人がいない状態でエドを放置したら一体どうなるのか、少し怖くなってしまう一瞬だった「あぁそうだ!ようやく分かった!」エドの振る舞ってくれたお菓子などを口に運ぶ中、糖分が入ったことで頭が回ったのか陽太が手を叩いて声をあげる先程から何かを考えていたようだが、どうやらそれに対しての結論が出たようだった一体何のことに考えていたのか知らないが、全員の視線が陽太の方へ向く「なんだよ陽太、いきなり大声出して、暴発したらどうするつもりだ」「あぁ・・・それについては悪い・・・ずっと引っかかってたことがあってそれがようやく分かったんだよ」先程から何かを考えていたようだったが、それがどんな内容なのか、静希達は首を傾げ陽太の言葉を待っている「静希が前言ってただろ?今回来てる奴は静希とエドモンドさんの間に召喚事件を起こした奴だって、だからそいつに話を聞くのが今回の目的だって」「あぁ、言ったな、ついでに確保して逮捕しておけば万々歳だな、悪魔も取り上げておきたい」もし召喚を行った犯人で、すでに契約が済んでいたとしても、トラウマを刺激することで悪魔の心臓に細工をした状態での契約であれば静希の能力を使ってその細工を取り除くことができるそうなれば悪魔もわざわざカロラインに付き従う理由はなくなるのではないかと静希も思っていたさすがに悪魔と複数契約できるかわからないため、その後の処遇は正直わかっていないが、今のところの予定としては陽太が言ったことで大筋間違いはない「それで?それが何か問題があったか?」「いや問題がって言うんじゃないけどさ、そのカロなんとかも静希達と同じように巻き込まれた側だったらどうするんだ?」その言葉に鏡花ははぁ?と眉を顰め、明利や大野、小岩も首をかしげているだがその中で静希、エド、城島は目を見開いていた、陽太の言葉の意味を理解したのである「なるほど・・・その可能性は考えていなかったね・・・」「でも殺されてたのはカロラインの家族でエルフだぞ?身内以外にそう易々と殺されるか?」「不意打ちであればいかにエルフといえど人間と変わらん、不可能ではないと思うぞ」陽太が示した可能性はつまり、カロラインが被害者であった場合の話だかつてエドモンドが犯人に仕立て上げられたように、カロラインも同じように犯人にされてしまったのではないかという話だエドモンドの時は静希が間に合い、解決したからこそ無事に無罪を獲得できたが、カロラインは誰も助けてくれなかったために犯人にされたという可能性があるとはいえ不審な点もある、資料の中ではカロラインの家族の殺害現場を見たのは配達に来ていた男性、そしてその時に逃げる彼女を見たと記してあったなぜそこで逃げる必要があったのか、被害者なのであれば逃げずに逆に助けを求めればよかったのではないか殺されていたのが彼女の身内だったというのも問題の一つだ、エルフが第三者にあっさり殺されるとは思えなかったのだ、それこそ身内だったからこそ完全に油断していたからこそ殺せたという考えがあったのであるその資料があったからこそ、静希はカロラインが自分たちと同じ被害者の側であることを失念していたと言えるだろう「逃げたのに関しては?何か理由があっての事か?」「わからんな、理由はいくらでもあるかもしれんぞ?我々にはわかりようもないことかもしれん・・・だが可能性の一つとして考えておくべきだ」「・・・一緒に弟も行動していると考えていいんだよね?この子はどうするべきだろうか・・・」資料にもあった足りない死体、五人家族の中で見つかった死体は三つのみ、カロライン本人と、もう一つ彼女の弟の死体が見つかっていないもしかしたら恐慌状態の中、弟を守るためにあの場から逃げたのかもしれないと考えながらも静希は状況が面倒になっていくのを感じていた今回のことにカロラインが接触しようとしているのであれば、弟も一緒に来ている可能性が高い、少なくとも事前にテオドールに伺いを立てた時は二人分の移動手段を用意していると言っていた、恐らくすでにこの近辺に潜伏していると考えていいだろう問題は今どこにいるのかと、何を目的にしているのかという事であるそして、静希はカロライン本人と対峙することが確定しているが、弟の方はどうするべきか今のところは部隊の方に任せておこうと考えているのだが、幼いとはいえエルフだ、その能力の力は侮れないそれにもしカロラインではなく、弟の方が契約者だったらそう考えると頭が痛い、こちらに二人悪魔の契約者がいることを差し引いても面倒なことこの上ない相手は二人、しかも両方エルフ、さらに言えばどちらが悪魔の契約者でも不思議はないのだ、逆に二人とも静希達の敵にはなりえないことだってあり得る陽太の閃きにより更なる可能性が生まれてしまったことで考えることが増えてしまった新しい考えが生まれることは良いことなのだが、その分頭脳労働を仕事とする静希達の負担が増えるのは半ば必然だと言えるだろう「警戒区域の中に踏み込んだら警告後に攻撃・・・たぶん軍はそうするだろうけど・・・」「圧倒的に初動が遅すぎるな、有無を言わさずに攻撃してきたらひとたまりもない」「第一接触は軍に任せ、その増援として駆けつけるのがベストな形だろうな、対話は組み伏せた後で行えばいい」城島の言う通り、現段階で相手の出方がわからないようであれば出方をうかがえばいいだけだ、そしてその一番槍を軍にやらせればいいというだけの話であるしっかり活躍したいという思いが向こうにもあるのだ、存分に活躍してもらうのが一番だろう、もっともその活躍は捨て駒に近い形であるのは言うまでもない静希としても可能なら使いたくない策ではあるが、自分の身と、見ず知らずの軍人たちの安全を比べた時に自分の方が大事なのは至極当然のことである日曜日なので二回分投稿・・・あれ?何かちょっと物足りないような気が・・・これからもお楽しみいただければ幸いです

「――ああああああああああっ!!!!」 膨大な魔力が俺に集まると、ピタリと辺りが制止した

 これは覚えがある! 俺が異世界転移に襲われた時の状況そっくりだ! 止まる景色、無音の世界、近くにいたアイシアやシドニエは鋼のように硬く、体温も感じない

 全部、あの時と同じ――、「ぐうあっ!?」 するとあの時と全く同じ頭が激しく揺れ、立っていられないほどの酷い目眩に襲われる